高い人件費を払うくらいなら…

スチュワードという職業の彼は、外国航路に乗務するから就労期間が集中している。そのため地上での休暇が、ほかのサラリーマンとちがってまとめて取れる。一緒に働いているスチュワード仲間も同じで、休みの長い彼らは同僚や彼らの家族ぐるみで、バカンスを楽しんでいた。そこでバカンスの一部をさいて、仲間たちに声をかけてブリコラージュ(日曜大工)に励もうというわけである。アントワーヌが購入した家を手はじめになん人かで仕上げたら、同じメンバーで仲間の家を、次々にリフォームしていけばいい。ペンキ塗り、壁紙の張り替え、カーペットの敷きこみなど、ブリコラージュの腕に自信がある男性たちの、プロジェクト・チームができあがった。

Photo by iStock

アパートでも戸建てでも、古くていたんだ家を安く購入し、きれいにリフォームして高値で売る。フランス人にとってそれは、利殖の第一歩である。それにはフランスが、地震と無縁な国だということが大きくかかわっているのは確かだ。それまで100年を経過している建物は、この先の100年はもつにちがいないし、200年経過しているなら、この先200年は大丈夫だろうという、いい加減なようだが、だれもがそう確信している。

フランス人の男性たちのだれもが、心からブリコラージュ好きだとはいいがたいが、業者にたのんで法外に高い人件費を払うぐらいなら、自分たちですればペンキや壁紙の実費だけですむ。電卓をたたいたうえで、趣味と実益をかねるのがリフォームのためのブリコラージュというわけだ。ただし、家の電気関係や水道の配管などの要所については、プロ職人の手を借りないわけにはいかない。

4月の復活祭も近づき、天候が安定してきたころ、アントワーヌ棟梁のもと、5人の仲間たちが集合した。いずれも仕事のある身だから、休暇は5人まちまちだ。自分たちのノルマにしたがい、それぞれに仕事に励んだ。そして1ヵ月ほどして、息子二人を連れてジュリーが工事中の新居に引っ越した。全館の修理が完了するのを待っていたら、いつになるかわからない。夫婦の寝室と子供部屋、台所はどうにか使えるようになったからだ。それでもペンキ塗りは途中、作業中の床にはビニールシートがかかり、庭には大きなセメントの袋や砂利がうずたかく積まれていた。