小泉進次郎や山本太郎の上手さ

例を挙げると、小泉進次郎氏は街頭演説や講演会で人気が高い政治家として知られています。ある講演会の冒頭で、彼はこう切り出したそうです。

民主党へ政権が交代した選挙で、初当選した時のことです。当時、世襲した政治家への風当たりがそうとう強く、自民党への失望感とも重なって、演説しても話を聞いてもらえなかった。自分の名刺を破られ、演説する横で太鼓を叩かれ、わざと足も踏まれました
 
昔を振り返り、こんな苦労話を話し始めると、聴衆は瞬時に話に引き込まれたそうです。
なぜなら、自分が犯した失敗談やうまくいかなかった体験談を語ることで、聴衆自身も経験がある、「彼も自分と似たような経験があったのか」と、「あるある」を引き出すことができ、話し手と聞き手との距離が縮まり、共感を引き出すことができるからです。

スピーチの上手さには定評がある Photo by Getty Images

聴衆に共感してもらい、関心を惹きつけるには、「自分視点」で成功をアピールするのではなく、「聞き手視点」で、自身の失敗談や経験談をもとにした「ストーリー」が効果的です。
 
政治家の山本太郎氏も、聞き手視点のストーリー使いの達人です。
 
彼が巧みに使っているのは、れいわ新選組の仲間たちや、これまで触れ合ってきた一般市民の「ミニストーリー」です。
聴衆の全員が、それらのいずれかに必ず状況が当てはまる、あるいは似通っている点を見つけることができ、共感できるように工夫されているのです。

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たとえば、こんなミニストーリーです。
「多額の学費ローンを借金させられている学生たち」
 「派遣切りになったシングルマザー」
 「かつては銀行員でエリート街道を歩んでいたのに、コンビニ親会社に搾取され続けたコンビニオーナー」
 
このようなたくさんのミニストーリーを次々と語るピンポイント作戦で、聴衆がどこかで必ず共感できるポイントを作っていきます。同時に、聴衆全体を包括的に取り込んでいくアプローチも合わせ技で使っています。

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一般市民に具体的に焦点を当てた「ミニストーリー」をたくさん例に挙げて、個人レベルの「聞き手視点」に訴求しながら、聞き手全員に問いかけていくことで、「聞き手視点」をさらに強化しています。