「普通のいい先生」を絶望に追いやった、教育現場の「リアルな闇」

悪意の「拡散」が止まらない
月村 了衛

―生徒と生徒、生徒と教師、生徒と親。教師間の人間関係や地域社会の人間関係も絡みつつ、閉鎖空間の学校から、じわじわと問題は広がりを見せていきます。

SNSの情報は、保護者に広がり、学校統廃合を巡る関係者の対立につながり、地域のニュースサイトや県議会にまでつながっていくんですね。

それによって登場人物たちは少しずつ追い詰められていき、閉塞感に苦しめられるようになっていく。強い悪意が学校や地域にばらまかれ、既存の地域問題に結び付いてしまうという構図です。私の場合は、作品の舞台や人物像の設定はもちろん、作品の流れもある程度計算してから執筆にかかるスタイルを取っています。

 

今回も閉ざされた環境の中、SNSによって事件に火が付けば恐ろしいことが起こると想定してはいたのですが、これは想定以上に薄気味悪い展開になったと感じています。なにせ一人の教師の人生が、真綿で締められるような息苦しさに変転するのですから。

汐野や生徒たち、学校と地域が直面する事件の顛末を、ぜひご覧ください。

人間心理を掘り下げる

―前作の『欺す衆生』は'80年代の豊田商事事件をモチーフにした詐欺犯罪小説でした。今回は学校。ここにギャップはありましたか?

前作は詐欺師の話で、そもそも闇深い話です。主人公が仕事を続けることでどう変化するかを描き、「人間の業」をあぶり出そうとしました。今回は学校の話ですからマイルドな物語になるかと思いきや、そうではなかった(笑)。