「普通のいい先生」を絶望に追いやった、教育現場の「リアルな闇」

悪意の「拡散」が止まらない
月村 了衛

中学生にも広がる、SNSの波

―そこに、事件が起きます。ある朝、担任クラスに行くと雰囲気がおかしい。生徒たちの間にはSNSで告発文が回っていました。

読書感想文コンクールの学校代表に選ばれた藪内三枝子の作品に、「盗作」疑惑があるとLINEで流れていた。当然、その作品は汐野が指導し、汐野自身が代表に選んだものでした。現在の社会は、中学生でさえ日常をSNSに左右される時代に突入しています。

これまでSNSを小説の題材にすることを積極的に考えていたわけではありませんが、私自身も日頃からメディアに接していますし、現代を描く場合、登場するのは必然であったように思います。

SNSは本来開放的なものだけれど、使い方によっては悪意を伝播させるツールとして機能します。そうなった時のツールとしての強力さ、伝播速度、拡散され具合は、従来のメディアにはなかったものです。

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―事件の被害者は、疑惑をかけられた三枝子です。問題のメッセージが発信されたスマホ本体は、なぜか演劇部のヒロイン、高瀬凜奈のバッグから見つかりました。

三枝子は、駒鳥中の統廃合問題で賛成派の中心にいる教育長の娘です。凜奈は、反対派の地主の娘。凜奈はカリスマ性のある女の子で、文才もあるんですね。凜奈の相棒で同じ演劇部の三隅小春という女の子も、重要な役割を果たしていくことになります。