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「普通のいい先生」を絶望に追いやった、教育現場の「リアルな闇」

悪意の「拡散」が止まらない

「ふつうの人々」の間で起こる悲劇

―新著暗記夜行』は、学園ミステリ小説です。学園といってもごく普通の公立中学が舞台。登場人物の教師も生徒も一般的で、当たり前によくいるような人々です。

作中の市立駒鳥中学は地方都市によくある小規模校です。文科省の方針により学校統廃合や小中一貫校化の話が出ているのも現実的な問題です。

主人公の汐野も一般的な教師です。学生時代は作家志望だったけれど、地方の大学を卒業して国語教師になった。駒鳥中学は国語教育に熱心な校風で、文芸部顧問になった汐野は指導に熱を入れる日々を送っています。

 

今回、学校を舞台にしたのは、閉鎖された環境の中で濃密に絡み合う人間関係を描きたかったからです。汐野のような普通の教師が、限られた場所でのっぴきならない状況に引きずり込まれる物語を描きたかったんです。

―汐野には恋人の沙妃がいます。彼女との交際をきっかけに野心を持つようにもなっています。

彼女は有力県会議員の一人娘です。婿ともなれば地盤を引き継ぎ、政界に進出することになる。そのためには教員としての評価を上げ、教育委員会に籍を移したいと思っているんですね。

そんな思惑があるから彼は正義漢、善人とは言い切れない一面があります。けれど、本当の悪事を働くような悪漢でもない、というのがこの人物設定のポイントです。