他人事ではない黒人差別抗議デモ、曖昧な「主語」をどう見るべきか

香港デモとの共通点と差異から考える
石井 大智 プロフィール

一方で、アメリカではどの程度デモの原因となった「人種差別は望ましくない」という前提が共有されているのであろうか。

少なくとも公の場で人種差別を公言することは基本的には許容されない。人種差別的発言によって著名人がテレビ番組などからの降板を求められたという事例もあれば、人種差別的発言をSNSで行うだけで解雇されたという事例もある。

このように人種差別を行う人自体は存在しても、彼らの公的空間での人種差別的発言は許容されないように見える。

しかしそれは「政治的正しさ」が要求される公的な言説空間での話であって、人々の本心や日常生活での実際の行動までその前提が共有されているかは当然検討が必要だろう。

そのような前提が共有できていない人々が多く存在するのであれば、香港と同様にアメリカでも社会の分裂が抗議活動への見方の違いからさらに強化されるだろう。

 

実際の世論調査を見てみると、CNNの委託を受けたSSRSの調査(6月2日から6月5日実施)によれば、84%が今回の平和的抗議活動に理解を示した一方、暴力的な抗議に理解を示すのは27%のみだった。モーニング・コンサルトが実施した世論調査(5月31日から6月1日実施)では58%が今回の抗議活動や暴動に対して米軍を派遣することに賛成し、反対は30%だった。

仮にこれらの世論調査が実態に近いものであるならば、平和的抗議活動への理解は概ね社会全体で共有されているが、暴力的な抗議活動とそれに対しどのように対処するかというかは社会全体で共有されているとは言い難い。

このような前提の違いが個々人に抗議活動のどの場面を切り取らせ、どのようにその場面の解釈の違いをもたらすのだろうか。

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