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正義という名の棍棒を振り回す「ゼロリスク信者」たち

あなたの、その正しさは本当に正しいか

差別や排除を生む

「いま、私たちの生活は大きく変わりつつあります。『大切な人を死なせない』という言葉を錦の御旗に、人々の行動が『良い』『悪い』の二つにはっきりと判別されるようになりました。

感染者を一人も出さないことが、絶対的な正義であるかのような価値観も生まれています。この価値観は、残念なことに日本人の間で差別と排除を生み出しています」

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こう語るのは、医療人類学者の磯野真穂氏だ。医療人類学とは、生きる上で抱える心身の不調を人間がどのように理解し、対処するのかを社会的な観点から研究する学問だ。

磯野氏は現場の医療者に講義を担当する傍ら、医療現場でのフィールドワークも続けてきた。

 

今回のコロナ騒動のもと、「絶対に感染してはならない」と多くの人が思っている。自分のためだけではない。周囲の人に感染を広げてしまい、迷惑をかけるかもしれないからだ。だが、磯野氏は、そうした一見すると道徳的な思考が、「正しさ」として社会を覆うことに警鐘を鳴らしている(以下、「 」内はすべて磯野氏の発言)。

「大前提として、感染拡大は抑えるべきです。実際に日本は『3密』を避ける対策で、感染者数を抑えてきました。ただ、その過程でリスク管理を徹底的に追求するようになり、『村八分』のような制裁行為も見られています」

わかりやすい例でいえば、世間からパチンコ店へのバッシングだろう。4月24日に大阪府は、休業要請に応じないパチンコ店を公表した。その結果、開業を続ける店舗や従業員に、抗議や脅迫が殺到するようになった。