子どもの前で暴力をふるわれ…

そのころ夫の病状は、人目にも明らかなほど重くなっていた。女性問題も発覚し、それにも千紗さんは大きく失望した。いくら病気で気が大きくなっていたときの過ちだとはいえ、簡単に受け入れられるはずもない。
「調べれば調べるほど、厄介な病気。薬物治療などで寛解(症状が出ていない)状態をできるだけ継続させながら、一生付き合っていかなければならない。離婚する人も多いみたいです。そうだろうな、と思いましたよ」

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実際、千紗さんも離婚を考えた。が、当時はまだ下の子が生まれたばかり。フルタイムで働いているといっても、東京で子ども2人を育てるのには心もとない。かといって地方に引っ越せば、せっかくの安定した仕事を失ってしまう。
夫は病気だとはいえ、会社には普通に行って稼いできてくれていたので、すぐに離婚するメリットはないと思い直した。

子どもにはいい父親でしたし。というのも、躁状態のときは家族なんか忘れてどこかに行ってしまうので、子どもには荒れている姿を見せずにすんでいたんです。それこそ海外旅行に突然、出かけてしまうこともありました」

そんなわけで、喧嘩は多いながらもなんとか家族として暮らしていたが、ある日、事件が起こる。
「躁の波がやってきたときに、暴れ出しちゃって。飲み会から帰ってきたら、言っていることが支離滅裂。咎めた私に暴力を振るってきたんです。暴力は初めてだったし、それが子どもの前だったというのもショックでした。それで、もう一緒にいられない、出て行って! と言ったら、躁で気が大きくなっているから『ああ、出て行ってやるよ!』と」

子どもにこういう姿を見せたくない。見せずに過ごせていたからこそ、結婚を続けていたのだが…Photo by iStock

それが3年前のこと。以来、今に至るまで別居生活は続いている。夫はワンルームマンションを借りて住み、病状が落ち着いているときに時々、子どもに会いにやってくる。マンションのローンや管理費は夫が払ってくれている。

「私とも、まあ普通に話しますよ。私が仕事で忙しいときや具合が悪いときなどに、子どもの世話を頼んだりもしますし。でも、夫婦ふたりだけの会話というのはないですね」