結婚したからには「病めるときも健やかなるときも」互いに支え合うべきだと、言うのはたやすい。しかし、現実にはなかなかむずかしいことだ。体の病気なら労わりの気持ちも湧きやすいが、心の病気は受け入れることからしてハードルが高い。

夫が心の病にかかったとき、妻はどう気持ちを整えたらいいのか。「病を憎んで人を憎まず」の境地に至ることはできるのか。夫の心の病が発覚し、その後別居をしたが離婚はしていない柏木千紗さん(仮名・41歳)に話を聞いた。

ライターの上條まゆみさんによる連載「子どものいる離婚」。離婚の連載ではあるが、今回は離婚せずに別居を3年続けている母親の姿をお伝えする。結婚や離婚は、自分らしく生きていくために自分たちが考え、決断するものだということを改めて感じる。
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波のある性格ではあったけど

「今思えば夫は、付き合っているときから、活動的でエネルギッシュなときとそうではないときの差が激しいところがありました。でも、性格は穏やかでやさしい人だったし、4年付き合っているうちの半分くらいは遠距離恋愛だったので、それほど気にならなかったんです」

千紗さんは、フルタイムで働く会社員で、13歳の女の子と8歳の男の子の母親だ。4歳年上の夫とは、千紗さんが大学生のときに趣味の場で知り合い、26歳で結婚。2人の子どもに恵まれた。夫も会社員で生活は安定しており、幸せそのものの家族の姿に見える。

結婚し、ともに暮らすと、あれ?と思うことも当然出てくるもの(写真はイメージです。写真の人物は本文と関係ありません)Photo by iStock

しかし結婚生活は、当初から順風満帆とは言えなかった。

「一緒に暮らし始めてみると、あれ? 普通じゃないな、と思うことがたくさんありました。平日なのに朝まで飲んで、8時ごろようやく帰ってきたと思ったら、そのまま一睡もせずに出勤。かと思えば、ドーンと落ち込んで起き上がれない日もある。浪費癖も酷くて、一晩で何万もするようなお店に通いつめてしまう」

共働きで財布は別にしていたので、家計にそれほどのダメージはなかったが、散財はやはり頭に来る。喧嘩は多かった。

2人目の子どもが生まれたばかりのある日、千紗さんは衝撃の事実を知らされる。夫が双極性障害であるとの診断を受けた、というのだ。
「会社でも急に多弁になるなど様子がおかしかったので、上司から産業医の診察を受けるよう勧められたらしいのです。ふつう双極性障害の診断はむずかしいとのことでしたが、たまたま産業医がその専門家だったことが幸いでした」