小池百合子氏「たった55日の防衛大臣」時代に起こした大混乱の真相

救世主として現れ、怪物として去った
半田 滋 プロフィール

小池氏は政治部記者に囲まれ、私は話をする機会がなかったが、下船する直前、握手を求められ、「あなたが半田さんね」と声を掛けられた。社会部記者は自衛隊制服組の取材を担当し、防衛相を直接、取材することはめったにない。

面はゆい気持ちになったが、私は翌朝、毎日新聞を見て、仰天する。「守屋事務次官退任 後任に西川氏」と1面にあったからだ。書いたのは洋上懇談会に出席していた同紙の政治部記者。小池氏によるリークは疑いようもなかった。

 

「ものすごい野心」

事務次官人事は、正副官房長官による閣議人事検討会議を経る必要がある。だが、小池氏はその手続きを踏んでいなかった。新聞で内示される形になった守屋氏は、次官室に西川徹矢官房長を呼び出し、「お前は知っていたのか、恥を知れ!」と怒鳴り上げ、大臣室に向かった。

「あなたには辞めてもらいます」「なぜ相談がなかったのか、納得できない」押し問答の末、守屋氏は官邸へ駆け込んだ。防衛省と官邸に激震が走る中、夕刻になると小池氏は予定通り、米国への外遊に出発した。

8月9日、10日の2日間で小池氏が面談した米政府関係者は、チェイニー副大統領、日本通で知られるアーミテージ元国務副長官、ゲーツ国防長官、ライス国務長官の4人。民間の保守系シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」では講演までこなした。

防衛相の訪米といえば通常、カウンターパートである国防長官との会談のみで終わる。直接関係のない副大統領や国務長官とも会った防衛相は、小池氏が初めてだ。

訪米時の小池氏(Photo by gettyimages)

ライス国務長官との面談で、小池氏は「私は『日本のライス』と呼ばれています。私のことを『マダム寿司』と呼んではどうでしょうか」と英語で意味不明のスピーチをしている。そもそも小池氏を「日本のライス(長官)」と呼ぶ人などいない。高揚感から思わず口走ったのだろうか。

関連記事