生きることに真っ直ぐな人たち

幽霊が出てくるストーリーであるにも関わらず、「生命力溢れる芝居にしたい」と勘九郎さんは力強く言った。その言葉を聞いて、ふと思い出したことがある。もう15年ほど前になるが、ホテルのラウンジで、十八代目中村勘三郎さんをインタビューしたこと。

人生相談の記事のために、ほんの20分ほど話を伺っただけなのだが、登場したときの、なんとも言えない明るさと野性味、イキの良さと華やぎに圧倒された。人間というより妖怪のような、麒麟や龍などの架空の動物のような、強烈な存在感。“生命力”に溢れるというのは、こういう人のことを指すのだと思った。

芝居場やコンサートなど、生(ライヴ)な場所で、私たちが目撃したいのは、“命のきらめき”なのかもしれない。勘九郎さんは、「牡丹燈籠」の登場人物を、「生きることに真っ直ぐな人たち」と表現した。映画も、ストレートプレイも、ミュージカルも歌舞伎も、総合芸術で描かれるのはいつだって人間であり、それを演じる俳優たちもまた、生きることに真っ直ぐな人たちである。

湧き上がる情熱を人前で表現できない悔しさは、俳優にとっての糧となる。そう遠くない未来に、私たちが再会する命のきらめきは、きっと、これまでよりもさらに眩しく、尊いはずだ。

撮影/岸本絢

〈写真右〉中村勘九郎
1981年10月31日、十八代目中村勘三郎の長男。86年1月歌舞伎座『盛綱陣屋』の小三郎で初お目見得。翌87年1月『門出二人桃太郎』の兄の桃太郎で二代目中村勘太郎を名乗り初舞台。2012年2月新橋演舞場『土蜘』僧智籌実は土蜘の精、『春興鏡獅子』の小姓弥生後に獅子の精などで六代目中村勘九郎を襲名。歌舞伎の舞台公演にとどまらず、映画、テレビ、写真集など幅広い分野へも挑戦している。2019年大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜」では主役の一人を演じた。

〈写真左〉中村七之助
1983年5月18日、十八代目中村勘三郎の次男。86年9月歌舞伎座『檻(おり)』の祭りの子勘吉で初お目見得。87年1月歌舞伎座『門出二人桃太郎』の弟の桃太郎で二代目中村七之助を名乗り初舞台。以後、舞台出演のみならずさまざまな所でも活躍。2003年ハリウッド映画「ラストサムライ」に明治天皇役で出演。近年は、大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』「令和元年版 怪談牡丹灯籠」など映像出演でも強い印象を残している。


撮影/岸本絢 ヘア&メイク/宮藤誠(Feliz Hair)  スタイリスト/
寺田邦子

衣裳クレジット/
【中村勘九郎】ジャケット 5万3千円/パンツ 2万3千円/タイ 1万3千円/シャツ、チーフ共に参考商品
【中村七之助】スーツ 7万9千円/タイ 9千円/チーフ、シャツ共に参考商品。
全てNEWYORKER(ダイドーフォワード)
TEL:0120-17-0599