人種差別を経験して知った、
黒人差別の過酷さ

ヨーロッパ在住のアフリカ系市民6000人に対して行なわれたFRA(欧州基本権機関)の調査では、フランス在住のアフリカ系市民のうち32%がヘイト・クライムに遭ったことが判明している。また、4人に1人が警察に拘束された経験があり、その40%が人種的背景を理由にしたものだった。ちなみに、フランスでのアフリカ系人種の移民人口は約300万人(Insee2018発表/フランス全体の人口は約6890万)で、全体の4%程度しかいないマイノリティ人種である(この数にはフランスで誕生したその子ども達は含まれないため、実際の比率はこれを上回る)。

結果的に、フランスではいつも人種的に立場の弱い者が泣き寝入りをする社会の構造がずっしりと腰を据えて何年も前から変わっていない。肌の色を理由に悪者扱いをされる、自分が既にそんなハンディを抱えて生きていかなければならない立場だったら、辛すぎやしないだろうか。外に出ればどこにも逃げ場がない人種差別は、継続するいじめとして本当につらい経験をもたらす。

私自身、フランスで新型コロナが警戒され始めた1月下旬、渡仏して10年近くで初めての人種差別を経験した。中国に始まった新型コロナは、特に電車に乗るフランス人をナーバスにした。その頃SNSでは「#私はウィルスじゃない」というハッシュタグと共に、フランス在住のアジア系の人々が差別の経験を語っていた。一方フランス人の発言には、「アジア人を見ても日本人か韓国人か分からないから、皆中国人だと思って離れるようにしている」というものが目立った。

新型コロナの脅威が報道された日を境に、いつもの駅のホームを歩くと、人々があからさまに後ずさりをするのが分かった。一瞬気のせいかと思ったが、ホームで電車を待つために立ち止まると、ササーッと潮を引くように周りから人がいなくなり、乗り込む車両が同じにならない位置まで人が逃げていく。同じ車両に私が乗ると分かると、スーツを着込んだ金髪の男女が、わざわざ後ろを振り向き私を蔑むような目で睨んだ

パリの混んだメトロでは、フランス人女性が連れの男性に「手すりに触るなんてあり得ない。ウィルスが染るから」とヒステリー気味に声を荒げ、遠く離れた位置に立つ私の方をわざわざ見て睨みつけた。「『私=中国人』のせいで、こんなに混んだメトロでも手すりに掴まることすらできない」と八つ当たりをしたいのだろう。当然電車では誰も横に座ってくることがなくなった。

アジア人というだけで避けられ、睨まれ、罵声を浴びせられたら…Photo by iStock

そんなことが往復の移動で計3時間断続的に続き、帰宅後はヘトヘトに疲れ果てていた。3日目にはついにノイローゼ気味になり、外出することすら怖くなったのだ。それでも、娘の習い事に連れて行かないわけにはいかずに外に出ると、道ですれ違いそうになった子連れの父親が、私の方に走って来そうになった子どもの腕を必死の形相で掴み、「そっちに行くな」と言いながら反対側の歩道へと渡っていく……。明らかに私のアイデンティティは「アジア人=ウィルス」と他人によって決めつけられたのだ。