素朴で愛らしい表情をたたえて、キュッキュッと首を鳴らす、鳴子こけし。江戸時代から続くこけし作りを実直に守る、宮城県最北部の山間にある鳴子温泉郷を木工作家の盛永省治さんが訪ねました。

独自技法によって愛らしい
音をさせる鳴子こけし。

〈日本こけし館〉では各地の工人から神社に奉納されたこけしが並び、それぞれの作者名が表示されている。/日本こけし館 宮城県大崎市鳴子温泉字尿前74-2 ☎0229-83-3600

東北の山村で生まれ、大切に受け継がれてきた、こけし。時代を超えて継承される中で、地域ごとの風土を反映したものが作り出され、姿形や模様に特徴を持つものが定着。現在、東北6県で作られるこけしはその地域独自の特徴ごとに11系統に分類され、主だった産地の名称で系統名がつけられている。

今回はこけし産地の中で最も古い歴史を持つといわれる鳴子こけしの町、鳴子へ。訪れたのは鹿児島県で制作を行う木工作家の盛永省治さんだ。

「木を扱うという点では同じですが、こけしについてはあまり知らないんです。あの独特の形はどうやって作られているのか、描彩は専門の工人がやっているのか。知りたいことがたくさんあります」

こけしになれる顔はめパネルもあるのでぜひ記念写真を。盛永さんの右隣に描かれているのは、「ねまりこ」といって、座った姿を表現したこけし。

まずは、こけしを知るため〈日本こけし館〉へ向かった。ここは、詩人で童話作家である深沢要のコレクションが寄贈されたことをきっかけに建てられた博物館。展示室には深沢のものをはじめ、こけし好きで知られる高松宮宣仁親王や俳優の菅原文太が収集した貴重なもの、各地の工人から奉納されたこけしなど約5000体がずらりと並んでいて、その迫力に圧倒される。

11系統ごとに分類され、説明文がついていて、特徴を確認しながらこけしを鑑賞すると、最初は全部同じように見えていても、見分けがつくようになってくるからおもしろい。

〈日本こけし館〉の設計を手がけたのは民芸建築で有名な山本勝巳、信建築設計事務所。ショーケースには深沢要だけではなく、美容家の名和好子が寄贈したこけしもある。

鳴子こけしは鳴子温泉郷を中心に作られる系統で、首を回すとキュッキュッと音が鳴るのが特徴。これは頭部を胴にはめ込むという独特の技法を用いるためで、津軽系や木地山系のように頭と胴が1本の材料から作られていたり、遠刈田系や弥治郎系のように頭部と胴を細い丸棒でつないだりする工法とは違う。

鳴子系と同じく南部系もはめ込み型の構造だが、こちらはゆるくはめているため、首がくらくらと動くという。また、肩が盛り上がり、中央に向かってくびれていて、裾に向かって再び広がる安定感のあるシルエットも印象的。胴には菊、楓や牡丹などが描かれており、他の系統と比べてかなり写実的だ。顔は童のような優しい表情で、華やかな姿形の中に素朴さがある。

店内にはインパクトのある巨大こけしから小指ほどのミニこけしまで豊富なサイズが揃う。/こけしの松田工房 宮城県大崎市鳴子温泉字上鳴子126-10 ☎0229-83-3573

鳴子こけしは木肌が白く、柔らかくて削りやすいミズキを使うことが多いそう。木の荒々しい表情や自然の歪みも個性として生かして制作している盛永さんは、「僕が使うのはサクラやカシが多いですね。同じ木工の作家でも木をどう見て、どう生かすのか。それぞれ見立て方が違うのでおもしろいです」という。