「線を引く」ことの功罪

『問題発見力を鍛える』vol.17
細谷 功 プロフィール
 

これを図に表すと以下のようになります。

これがまさに先にお話した「問題」を生み出す原因になります

先の連載で、問題とは「歪み」のことであるとお話しましたが、この線引きからある「歪み」が生まれるのです。

特にその線引きされた箇所の周辺では線の境目の左右で「ほとんど同じ」だったものが白か黒かと真っ二つに分かれて「全く違うもの」という扱いを受けます

例えば1から100までの数字を「大きいか小さいか」で二つにわけるような場面があるとするとして、仮にその「しきい値」を50とすれば、1も49も「小」に分類され、51も100も「大」と一律に分類されていまいます。

実際には49も51も「ほとんど同じ」であるにもかかわらず、分類という抽象化によってその違いは「1と100の違いと同じように扱われる」ことになります。

このような「線引き」は私たちが社会生活を営む上で、様々なルールを設定する際に常に行われます。例えばスピード違反を取り締まるための制限速度、補助金を出すための収入といったものがこれに相当しますが、そうなると「見通しが限りなく良くて周りに車が全くいない状態での1キロオーバー」「見通しが悪い住宅街での30キロオーバー」「スピード違反」という範疇でとらえると「同じもの」になります(もちろん罰金や減点は異なりますが)。

同様に「年収○○万円」という線引きは、独身貴族でも学費がかかる子供が5人いる家庭でも「同じ」と扱うことで実際には様々な歪みが生じます。

記憶に新しいところでは、消費税率上げの除外事項として「生活必需品か否か」という「線引き」が試みられましたが、その結果として「どこまでを外食というか?」といったような様々な「歪み」=問題が生まれました

新型コロナに関しての給付金でも、一律にするか「本当に困っている人限定」にするかという議論がありました。ここで後者を採用した場合には必ず「線引き問題」が発生し、時間がかかることが予想されたことが要因の一つとなって、スピード優先の施策として「一律配布」となりましたが、これはこれで「全員同じ」と扱うことによって(「すべてが黒」になってしまったので)別の意味での歪みが生じることになりました。

このような「線引きによる歪みの発生」は行政や組織内における大小のルールの施行の際には必ず問題になります。

問題発見の観点から言えば、線引きが行われれば必ず「歪み」が発生するところが「目の付け所」になります。皆さんの身の回りで行われた「線引き」が生み出した問題で何か思い当たるものがなかったか、「問題発見のトレーニング」として考えてみて下さい。