前回紹介したアナロジーで必要なことは、抽象レベルで事象をとらえることでした。このように、目に見える具体的なものだけでなく、物事を抽象化してとらえることが問題を発見する上で重要です。
では抽象化するとはどのようなことでしょうか?それをこれからいくつかの観点から考えてみましょう。まず今回はそのうちの一つの視点を取り上げます。ここで取り上げる抽象化というのは、「まとめて分類する」ということです。「カテゴリーで考える」とも言えます。
抽象に対する概念が具体です。具体というのは、個別の事象を一つ一つ個別バラバラにとらえることを意味します。具体の世界では全てを異なるものとしてとらえます。
昨日の夜食べたトロ、今朝食べた焼き鮭、そして家で飼っている金魚は具体レベルで考えたら「どう考えても別のもの」ですが、抽象化すれば「魚」という「同じもの」になるわけです。
このように、複数のものをまとめて一つにくくることが抽象化の一つの基本的な側面です。このような抽象化によって、私たちは多くのものをまとめて扱うことができ、これを知識として活用することで日常生活に役立てています。
具体的に考えていると全ての事象を個別に扱う必要がありますが、抽象化によって一つの情報や経験を10にも100にも応用することができるようになります。
このように私たちの知的能力の基本ともなり、日常生活を豊かに過ごすために必須の抽象化、あるいは「分類する」「カテゴリーで考える」という行為が実は身の回りにおける数々の問題も生み出しているのです。
ここで「分類する」という行為を改めて考えてみましょう。例えば動物と魚とか虫と魚といったものを分類するためには、「魚であるものとそうでないものの間に境界線を引く」ことが必須になります。
つまり、「まとめて一つとして考える」という分類のもう一つの側面は「そうでないものとの間に線を引く」ことであるとも言えます。
このように私たちは「線を引く」ことで知的能力を発揮して様々な事象に応用して賢くなってきた半面、まさにこの「線を引く」という行為そのものによって同時に多くの問題を生み出しているのです。
世の中の事象は全てアナログ的に「全てがグレー」で、簡単に白か黒かとスパッと割り切れるわけではありません。ところが先の「線を引く」というのは、そこを割り切ってある「しきい値」を境にスパッと割り切ってしまうことでまとめることが可能になります。