特売セールに営業時間無制限…新型コロナで激変するイタリアの商店街

近くの陽性患者を知らせるアプリも
田島 麻美 プロフィール
 

この美容院のように一度に入れる客の数、働けるスタッフの数が少なくなるぶん、営業時間を延長しなければ利益が出ないという店は多く、ローマ市は6月5日に新たな営業上の規定を設け、客の滞在時間が長い美容院や自動車修理工場などに関しては営業時間を無制限とすることが決められた。

他方、旧市街のショッピングストリートにある小売店舗は、店員の時差通勤や客の分散来店を目的に、業種によって営業時間をずらし、時間差を設けて営業している。

限られた客数と営業時間の中で、3ヵ月間の損失を埋めつつ売り上げを伸ばしていくのは至難のわざだ。

そんな状況の中、イタリア各地の商店街では夏の間中「特売セール」を継続するという店が増えている。ローマの商店街でも、多くのアパレル関係の店は営業再開になった途端に「50〜70%オフ」の大セールを開始した。

通常は6月下旬から始まる夏のセールだが、今年は早くも本格的なセールが始まり、夏の間中ずっと続くような気配がある。テレビCMでもロックダウンが解除になるやいなや、お買い得商品、新製品、特別セールのPRが画面を埋め尽くすようになった

コロナ危機の影響でやむなく閉店した店舗も多い中、生き残った企業や商店はどこも一斉にアクセルを踏み込み、経済の立て直しに満身創痍で臨んでいる。

陽性患者を知らせるアプリ

企業も店舗も営業を再開し、鉄道駅や空港も旅行者を受け入れ始めたが、ウイルスは消えたわけではなく、まだ歴然と私たちの周りに存在している。

今年の秋冬に予想されている第二波への備えも含め、政府は医療施設や設備、スタッフの充実にも多くの予算を割いている。イタリアでは6月7日までに420万人以上にPCR検査を実施してきたが、5月下旬からはさらに全国で大規模な抗体検査も始まった。

保健省とイタリア統計局、イタリア赤十字社の共同プロジェクトであるこの抗体検査は、国内の2000の自治体から15万人の血清サンプルを集め、感染の拡大状況とその範囲を特定すると同時に抗体を持つ人の居住地域、年代、性別、出身地、経済活動などあらゆる要因を分析することを目標としている。

政府がこうした大規模なデータ収集と分析に乗り出したのに対し、個人の予防対策としては以前から予告されていた「免疫アプリ/ L’app Immuni」のダウンロードが始まった。

Bluetoothを利用して陽性患者の接近を知らせるスマホ用アプリ「Immuni」。無症状のまま感染を拡大させるのを防ぐ効果が期待されている(出典:イタリア保健省)
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ダウンロードは任意で、個人データを保護するためBluetoothを使用するシステムになっている。スマホにこのアプリを入れておくと、陽性患者が身近にいた場合にメッセージで知らせてくれる(陽性患者は特定できない)。

警告メッセージを受けた人はすぐに指定機関に連絡して検査を受け、自宅隔離をする、というのが大まかな流れだ。アプリの使用は任意なのでどこまで感染拡大防止に役立つのか未知数なところはあるが、これからのバカンスシーズン、人が集まりやすいビーチなどで効果があるのではと期待されている。

新型コロナウイルスはイタリア経済に甚大な被害をもたらした。この間の経済的損失を補っていくには、相当な時間が必要になるだろう。

現状や将来を悲観し、不満のぶつけどころを模索している人も確かに増えているが、ロックダウンの3ヵ月を冷静な判断と他人への思いやりで乗り切ったイタリア人ならきっと、ヒューマニズムによってこの難局を打開してくれるに違いない。