コロナの「前」と「後」を比べる私たちに、圧倒的に足りないもの

平安時代に大流行した和歌から学ぶ

優れた解釈の書

梁塵秘抄の世界』は植木朝子氏(同志社大学大学院教授)による平安末期に大流行した「今様」の歌謡集『梁塵秘抄』に関するユニークな研究書だ。高度な学術的内容をかみ砕いて、一般の読者にわかりやすく説明している。

平安時代末、京都で大流行したはやり歌があった。最盛期には「そのころの上下、ちとうめきてかしらふらぬはなかりけり」(『文机談』)というように、身分の上下を問わず、それをうなって頭を振らない者はないほどであったが、鎌倉時代以後は宮廷行事の一部に取り込まれて残るだけとなり、江戸時代にはほとんど忘れ去られた歌々であった。

 

「今めかしさ」、すなわち目新しく派手な魅力を持つ故に「今様」と名づけられた歌謡群である。

この今様の魅力に取り憑かれた帝王・後白河院は今様集『梁塵秘抄』を編纂した。鎌倉時代末に成立した『本朝書籍目録』の「管絃」の項に「梁塵秘抄。廿巻。後白川院勅撰」とあるので、もと二十巻で、おそらく歌詞集『梁塵秘抄』十巻と、今様の歴史、口伝などを記した『梁塵秘抄口伝集』十巻から成っていたと推測される。

ただし、『梁塵秘抄』は『口伝集』巻十が群書類従におさめられていただけで、長い間埋もれていた。明治の末に歌詞集『梁塵秘抄』巻一断簡と巻二が発見され、にわかに注目をあびることになったのである。