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「蔡英文民進党革命」進む台湾が、「米中新冷戦の火薬庫」になる日

日本にとっても「対岸の火事」ではない

台湾で、「革命の嵐」が吹き荒れている。それは、「蔡英文民進党革命」と呼ぶべきものだ。

6月6日、台湾南部に位置する副都・高雄(Gaoxiong)の韓国瑜(Han Guoyu)市長が、罷免された。日本で言えば、大阪府知事が罷免されるようなもので、前代未聞の夏の珍事である。

彼と国民党で起こっていることについては、今年に入って台湾を取材した新著『アジア燃ゆ』(MdN新書)で詳述したので、ご覧いただきたい。一言で言えば、「台湾の自民党」とも言うべき20世紀後半の台湾を完全支配していた国民党は、いまや解党の危機に陥っている。

台湾で何が起こっているのか

思えば、わずか1年半ほど前の2018年11月、韓国瑜前市長は「台湾ナンバー1」のヒーローだった。市場の社長だった男が、敵方・民進党の絶対的地盤である高雄に、単身乗り込んで行った。そもそも北部と違い、国民党が勝てる地域ではないため、目ぼしい国民党公認候補が立たず、韓国瑜氏はすんなり、国民党公認候補となった。

それからは、「韓流ブームを巻き起こす」として、ひたすらドブ板選挙である。禿げ頭なのに街の床屋に飛び込んで、「私の散髪は髪を洗うことだ」とか言って、顔を逆さまにした洗髪風景をテレビカメラに撮らせる。中国大陸からの「応援資金投入」も噂され、かなり羽振りよく選挙資金を使った。

韓国瑜候補が当時、有権者に最も強く訴えていたのが、「民主でメシは食えない」ということだった。

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「蔡英文民進党政権は、民主、民主と言うけれど、皆さん、民主でメシが食えますか?(2016年5月に)蔡英文政権になってから、街から中国人観光客が消えたでしょう。『台商』(中国大陸に渡った台湾人ビジネスマン)たちが戻ってきているでしょう。世界第二の経済大国がすぐ隣にあるというのに、なぜ背を向けるんですか? そんな愚かなことをやっているから、この高雄も不景気になるんです」

こんな調子で、景気が低迷している高雄市民の拍手喝采を浴びた。そうした結果、韓国瑜候補は高雄市長選で、「奇跡の勝利」を収めるのである。

少しでも台湾政治を齧った人なら、これがどのくらいディープインパクトか分かるはずだ。勝利会見に臨んだ韓国瑜新市長は、「高雄の皆さんが奇跡を実現してくれた。これからの4年間、高雄市民のために粉骨砕身尽くします」と、顔をくしゃくしゃにして頭を垂れた。

逆に、中国と対立する蔡英文政権は、「鉄板の高雄」まで失い、この時の統一地方選での首長選の結果は6勝16敗。政権支持率を15%まで落とし、最悪の時を迎えた。もはや誰が国民党の次期総統候補になっても、次の総統選挙で蔡英文総統に楽勝するだろうとまで言われた。

 

ところが昨年6月以降、流れが逆転するのである。きっかけは、海を隔てた香港で、逃亡犯条例改正に反対して起こったデモだった。もしも改正案が通れば、中国大陸が「犯罪者」扱いする香港人を、中国大陸に連行できるようになる。香港の言論の自由は失われるとして、香港で100万人、200万人のデモが、週末ごとに始まったのだ。