「漂白剤を薄めれば手指消毒液になる」の誤解

国民すべてに専門的知識があるわけではない。今回の「次亜塩素酸水」問題に関しても、私の母は、次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムを同じものだと思い込んでいた。「手指用のアルコール消毒液がなくなってきたの。漂白剤を水で薄めて使えば同じ効果があるんでしょ」と電話で聞かれで青ざめたことがあった。でも、母のような勘違いをしている人は少なくないだろう。そして、母は私に問いかけたのだ。「じゃぁ、次亜塩素酸ってそもそもなんなの?」と。うっ……。なんてことだ。でも、正確には自分も答えられない……。

厚労省が出している「新型コロナウイルス対策 身のまわりを清潔にしましょう」というパンフレットがある。これはイラスト入りで比較的わかりやすい資料だ。

パンフレットには、「手の消毒には石けんによる手洗い、食器・手すり・ドアノブなど身近な物の消毒には塩素系漂白剤を薄めたものが適当です」と書かれ、食器・手すり・ドアノブなど身近な物の消毒には、アルコールよりも、熱水や塩素系漂白剤が有効で、0.05% 以上の次亜塩素酸ナトリウム液の作り方も説明している。しかし、これを見て「手洗いに次亜塩素酸水ならよい」と勘違いした人もいるというのだ。80代の母は、実際に水で薄めた漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)ならよいと解釈していたのだ。

よく読めば、食器・手すり・ドアノブなどに限定しているが、「アルコールよりも熱水や塩素系漂白剤が有効です」というところだけ読んでしまうと、アルコールがなければ塩素系漂白剤を、と勘違いする人もいても大げさではない。指導や注意喚起の表現は万人にわかるように作るのはとても難しいのだ。

「ドアノブなどを拭くのに有効」と書かれている。人体に有効とは書かれていない Photo by iStock

しかも、理系の知識と思うだけでハードルが上がる人は少なくないのではないか。私も正直苦手だ……。ということで、高校化学教科書なども手がけ、『もっと身近にあふれる「科学」が3時間でわかる本』などの著書がある理科教育(科学教育)、科学リテラシーの育成を専門家の左巻健男氏に話を伺った。