トランプ米大統領と習近平中国国家主席。2017年には「友情が生まれた」と握手をかわした2人だが

コロナ禍のなか、米中はすでに「新たな戦争」に突入している!

そして、日本が危険にさらされる

中国共産党の大失策

中国は5月28日、全国人民代表大会(全人代)において、「香港国家安全法」の制定方針を採択した。

 

この採択に先立つ27日、ポンペオ米国務長官は声明で、「国務省は(米国で昨年11月に成立した)「香港人権・民主主義法」により、香港の自治の評価を義務づけられている」と指摘し、「香港は1997年7月(中国への返還)から適用されていた『香港政策法(Hong Kong Policy Act)』と同様の扱いを受け続けるのに値しないと判断し、今日議会に報告した」と述べた。

マスク姿の党員がずらりと並んだ今年の全人代

現在まで香港は、この「香港政策法」によって米国との間の通商上「特別な地位」を有し、中国本土に課されている関税や輸出制限を免除されている。

この全人代の採択の後、5月29日の記者会見でトランプ大統領は、「中国に関する声明」を発表し、その中で「中国への返還以来、米国が香港に与えてきた優遇措置を続けるための正当な根拠となる自治がないのは明らかだ。中国は、約束した『一国二制度』方式を『一国一制度』に置き換えた。私は政府に対して、香港を特別扱いしてきた政策をやめるプロセスを始めるよう指示する」などと述べた。

香港国家安全法の制定に抗議の声を上げる人々

この米国の対応が、香港に及ぼす影響や今後の動向などについては、近藤大介氏の本誌(6月2日付)「香港『国家安全法』巡る米中対決、中国に勝ち目ナシと言える理由」や、長谷川幸洋氏の同(6月5日付)「香港問題、中国はアメリカに『絶対勝てない』と言い切れるワケ」などで、今後の中国経済への影響などを中心に詳細に分析しておられるので、こちらをご覧いただききたい。

今回の「香港国家安全法」制定方針の採択は、習近平国家主席、延いては中国共産党にとって最悪と言える政治決定であり、世界の歴史における転換点になるであろうと筆者は考えている。

これは、上記の論稿で両氏が分析しておられるような経済的な面もさることながら、特に東アジアの安全保障上の観点からも大失策であると思える。

先ず何よりも、時期が悪すぎる。4月21日の拙稿「コロナ禍に乗じて挑発を繰り返す、中国・北朝鮮が招く『最悪の事態』」で述べたように、現在の米中関係は最悪であり、しかも今の米国は「手負いの獅子」のような状態だ。

この採択は、本年9月に予定されている香港立法会(議会)選挙で、民主派が過半数を取ることを警戒して、中国共産党が本法の制定を急いだものと見られるが、4月21日の拙稿「コロナ禍に乗じて挑発を繰り返す、中国・北朝鮮が招く『最悪の事態』」で述べたように、現在の米中関係は最悪であり、しかも、今の米国は「手負いの獅子」のような状態だ。

しかも、コロナ禍に引き続いて、警察の拘束によって黒人男性が死亡した事件を契機に全米で人種差別に対する抗議活動が頻発し、これが暴動へと発展して各地で騒乱状態となっている。この暴動も、「コロナ禍に関連して鬱屈した黒人や貧民層などの怒りが爆発した」という側面があり、極めて荒んだ現在の国情を体現しているように見受けられる。

これに対して、トランプ大統領はこの新型コロナが拡大したのは「発生源である中国が事実を隠ぺいしたせいである」と断定しているのであるから、かくのごとく米国が荒んでしまった「諸悪の根源は中国だ」という流れになるのは明らかであり、これらの責任を中国に転嫁しようと今後も世論を誘導するであろう。