韓国の人々は「自国のコロナ対策」をどう見たか〜それは誇りか、危機感か

金杭 × 平野啓一郎
現代ビジネス編集部

 だから、これをどのように(異論や対立を含む)政治的な議論として成り立たせていくか、政府に様々な声に耳を傾けさせるようにできるのかということがいまの課題になっていると言えます。

ただし、梨泰院の例がいまの韓国の状況をよく表していると思うんですが、感染者が増えてもうろたえないんですよ。政府批判もないですし、たとえばクラブに行った連中に対しても、基本的にヘイトとかそういう声が出てこないんです。

平野 そこが興味深いところですね。日本では、比率的には少ないと思うけれど、自警団的な人たちの存在が問題化している。韓国ではそれが落ち着いているように見えるというのはどういうことなんでしょうか? 「うろたえない」というのはどういう意味で捉えればいいですか?

 それはやはり、「今回も管理本部が対策してくれる」という信頼だと思います。実際、管理本部の対策をどれくらい信用するかというアンケートをとったところ80%以上が信頼しているということだった。

4月の総選挙の投票の様子。与党が圧勝した〔PHOTO〕Gettyimages
 

平野 コロナの対策については、台湾なども含めて、政府を信頼するという市民の割合が、あり得ないくらい高い数字にのぼっている。それは、金さんがおっしゃったように、この問題が政治的に議論されなければならないフェーズにきたときに問題になるのだろうと思います。

 社会全体に関わるような大きな判断には「裏」があるものです。うまく行っている、信頼できるというのは、裏返せば、怖いことでもある。現状のやり方だけが「正解」になってしまうからです。何かのきっかけで、全体主義的な雰囲気が出てくるかもしれない。だからこそ、政治的な場でどのようにこの問題を議論するのか考えなければなりません。

まだ現段階では、韓国政府の一心不乱の対策のどこがうまくいき、どこが失敗したのか、明確なことはわかっていない。いま必要なのは、情報を集約し、共有して、何がうまくいって、何がダメだったのかを吟味することだと思います。韓国の対策は確かにうまくっていると思いますが、そこには隠された裏面もあって、そのバランスをいかにとって行くかが重要だと思います。

関連記事

おすすめの記事