韓国の人々は「自国のコロナ対策」をどう見たか〜それは誇りか、危機感か

金杭 × 平野啓一郎
現代ビジネス編集部

大統領府の姿が見えない

平野 日本では、専門家会議の方針とは違った意見を述べる専門家の声もあります。韓国では、疾病管理本部の専門家以外の、市井の専門家から反対の声が上がったりすることはあるのでしょうか。

 もちろんあります。管理本部主導で行われている対策に、科学的な批判を、テレビやインターネットでする専門家もいる。医師連も公式な声明として管理本部のやり方を批判したりしています。

ただ、この方針について「混乱」や「分裂」と言えるような状況にはなっていません。それは、僕がみるに、大統領府が前面に出ていないからだと思います。

韓国の政治は、基本的に大統領府に権力が集中する仕組みになっています。それゆえ、大きな問題のときに大統領府が前に出てくると、野党が批判をするなど問題が「政治化」してしまうケースがこれまで非常に多かった。しかし今回は、大統領府の姿がほとんど見えていないのです。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

平野 それは他国からは少し理解しにくいことですね。なぜならこの間、文在寅大統領の支持率は上がっているから。また、世界では、コロナ禍で各国のリーダーシップが問われたという声も聞こえてきます。

 もちろん、大統領府は裏では管理本部と密接に連絡を取り合っていると思いますが、調整をするだけで前面には出てこない。あくまで管理本部が主導しているということをアピールしてきました。

先月、韓国では総選挙がありました。野党は政府のコロナ対策を政治的な争点にしたかったが、市民はこれが「政治問題」だと思っていないので、野党の目論見はうまくいっていません。管理本部が中心になって決定をしているという体裁が、文在寅政権の支持率をあげる要因に繋がっているのです。

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