韓国の人々は「自国のコロナ対策」をどう見たか〜それは誇りか、危機感か

金杭 × 平野啓一郎
現代ビジネス編集部

 なぜそうなったのか。コロナ対策を中心的に行なっている「疾病管理本部」に対する、国民の信頼がとても厚いからです。管理本部の本部長や副本部長が毎日テレビで会見をするなど懸命に対策に取り組んでいる様子が窺えますし、指揮系統がしっかりしていることも示されている。こうした対策機関への信頼の高さによって、プライバシーの侵害への批判の声が上がりにくくなっている。管理本部と市民の信頼関係が非常に特徴的なのです。

僕は長い間韓国社会に暮らしていますが、政権が保守か革新かを問わず、ここまで信頼が高かったことは記憶にありません。

 

過去の感染症対策への反省

平野 なるほど。今回の韓国の対応には、SARS、MERSの経験が影響していると言われますが、金さんはどう見ていますか。また、疾病管理本部はどう位置づけられているのでしょうか。政権下にあるのか、政権から独立しているのか。

 SARS、MERSの経験は大きいと思います。とくに「情報公開」の面で顕著です。2012〜2013年のMERSの感染拡大のときには、サムスンの系列病院で集団感染が起きました。しかし、管理本部が病院を管理下において統制しようとしたところ、サムスン側が拒否し、それで被害が拡大したのです。この経験は大きかった。こうした経験への反省から、(様々な政治的主体と利害関係が出ないように)今回の管理本部は、政権からは相対的に独立した位置に設置されています。

また、反省という意味では、セウォル号事件の市民的トラウマが非常に大きいと思う。この事件以来、災害や事故が起きたときに、政府がどういう対応するかを市民が事細かに注意して見るようになりました。政府の側も災害にどう対応するかがプライマリーな課題になっている。

とくに現在の政権は、セウォル号事件の弾劾によって生まれた政権なので、対策に力を入れざるを得ない。そうした背景の中で、先ほども申し上げた通り、管理本部が毎日、情報公開を行うといった試みが生まれているのでしょう。フェイクニュースが出てきても、管理本部が対処しています。

プライバシーの侵害を許容するような法律がでてきても国民が許容した背景には、こうした事情があると思います。

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