総務省が毎年発行している「通信利用動向調査」の平成30年度版によれば、ブロードバンド回線の利用者は97.4%と、ほぼ全世帯に普及している。
しかし、総務省が「ブロードバンド回線」と定義している回線は、いわゆる「固定回線」だけではない。光回線利用家庭が63.4%、CATV回線も17.3%であるのに対し、「携帯電話回線」と答えた世帯が51.3%もある。この調査は「複数回答あり」なので、複数の回線を使っている家庭では重複して算出されているはずだ。
したがって、「スマホでしか通信ができない家庭が5割ある」わけではないことに留意する必要がある。
とはいえ、光回線とCATV回線などの重複利用は少ないと想定されることから、結果的に、残りの20%弱の家庭では「高速でインターネットはできるが、固定回線はない」と推察できる。

モバイル回線の弱点
本質的な話をすれば、自宅で使うインターネット回線が、光ファイバーなどの屋内に引き込まれたいわゆる「固定回線」か、スマホやモバイルWi-Fiルーターを使った「モバイル回線」か、という違いに大きな問題があるわけではない。問題なく常時、高速通信ができているなら、手段はどちらでもいいはずだ。
しかし、本質的には正しいこの話も、現状ではそうなっていない。固定回線とモバイル回線の提供している通信品質が、イコールとは言いがたいからだ。
モバイル回線は、多くの人で電波を共有・シェアするものだ。使う人が多ければ、それだけ通信速度が落ちる。もちろん固定網でも、混み合えば通信速度は落ちるのだが、電波のほうが制約条件が厳しい。

値段は高いのに…?
通信速度に差はあれど、固定回線は基本的に「使い放題」だ。一方のモバイル回線は、最近になって一部使い放題プランも登場しているものの、基本的には「ひと月に使える通信の量」が決められており、それに応じて利用料を支払うかたちになっている。
何十GBもの通信を毎日し続けるような使い方は、利用者間でのインフラ利用に不公平を生じさせ、通信事業者にも負担をかけるため、「使い放題」を標榜しつつも、過大に利用する人には速度制限を科す事業者もある。
そもそも、モバイル回線の使い放題プランは一般的に、固定回線よりも料金が高く設定されている。どちらにも割引サービスなどがあるので価格がわかりづらくなっているが、複数の条件にともなう割引を勘案しない場合、固定回線がおおむね月額5000円程度であるのに対し、モバイル回線では7000円を超える。
2000円ほど高額であるにもかかわらず、使用制限は固定回線より厳しいのが実情なのだ。 なぜか?