新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした「生活の変化」について考える機会が増えている。「ニューノーマル」や「新しい日常」などと言われるものだ。
しかし筆者は、新型コロナウイルスが「なにか新しいことを引き起こした」とは考えていない。むしろ、かねて存在していた課題や、それら課題の変化がはっきりと可視化され、さらにはその変化が加速された……というのが実相ではないか。
そうした課題のなかでも、最も大きなものの1つが「通信環境の格差」だ。過去、通信環境の格差とは、「都会と地方」のあいだに横たわるものを指す言葉だった。
ところが現在は、所得や年齢層による差のほうが大きくなっている。コロナがあらわにした新たな通信格差とはなにか? 今回は、この点をあらためて考えてみたい。
3月初旬に学校が一斉休校になり、翌4月に緊急事態宣言が発令されると、携帯電話事業各社は、学生向けプランにおける支援措置を相次いで打ち出した。
利用者の多い三大キャリア=NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクが打ち出したのが、「データ使用量の制約を大幅に緩和する」策だ。25歳以下の個人について、3社いずれも、どの料金プランを使っていても1ヵ月あたり50GBまでのデータ使用量を無料とした。
この施策は現状、6月30日まで継続されることになっている。 低価格な通信料金を売り物にする他の通信事業者(MVNO)も、大手3社ほどではないものの、学生向けのデータ使用量制限緩和をおこなったところが少なくない。
例外として、楽天モバイルは、もともと自社エリア内の通信を使い放題としているため、特に学生向けの施策はおこなっていない。
こうした対策の目的はもちろん、遠隔での授業にともなう通信費負担を軽減することだ。
遠隔授業が増えれば、そのぶん通信量も増える。ふだんなら通信容量の少ない低価格プランで問題のなかった家庭が、通信費の増大に悩まされる可能性が高かった。
逆に言えば、日本にはそれだけ「通信回線がスマートフォンしかない」という家庭が少なくない、ということである。