誤差「300億年で1秒」の光格子時計、何がすごい? どこに使う?

スカイツリーで時間の速さを計ったら
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たとえば、ブラックホールの中は重力が強すぎて、外から観測すると時間がほぼ止まったように見えてしまうと言われています。逆に、火星は地球よりも重力が少し弱いので、時間の進み方が少し速くなると言われています。

地球上では地面に近いほど重力が大きいので、地面から離れるほど、つまり高い場所に行くほど、実は時間の進み方が速くなっています。ですから、スカイツリーの展望台では地上よりもほんの少しだけ時間が速く進んでいるのです。

展望台と地上の間の時間の差は、到底私たちが実感できるほどではありませんが、光格子時計ならその小さな差が検出できます。

実際、地上とスカイツリーの展望台にそれぞれ光格子時計を置いて時間を測った結果、展望台では地上よりも1日あたり4.26ナノ秒だけ速く時間が進んでいることがわかりました。(4.26ナノ秒=0.00000000426秒です!)

この実験のすごいところは、本来は実験室のほぼ全体を占めるほどに大きかった光格子時計を大型の冷蔵庫ぐらいのサイズまで小さくし、展望台のような場所に「持ち運べる」くらいの大きさにすることができたことと、数百メートル程度の、「人間の生活スケール」の高低差での時間のズレを計測できたことにあります。

この実験が成功したことで、光格子時計の実用化への道がグッと縮まったと言えるでしょう。

「魔法波長」の出番

そんな光格子時計ですが、どんな仕組みでできているのでしょうか。

物質を構成する原子には、決まった周波数の電波が当たるとエネルギーが高い状態に変化する性質があります。色々な周波数の電波を原子に当て、そのような状態の変化が起こったタイミングを特定することで、正確に1秒を定義することができます。

つまり、原子のエネルギー変化を目印にして、特定の周波数の電波を当てていることを確認するということです。はじめに紹介したセシウム原子時計でも同じ原理を利用しており、セシウムの場合は、セシウム原子のエネルギー変化を基準として、周波数が9,192,631,770Hzの電波を正確に作り出し、1秒を定義しています。

セシウム原子時計のしくみ Illustration by Getty Images

セシウム原子時計でもかなり精度の高い測定ができていたのですが、3000万年に1秒の誤差が生じていました。その原因は原子が微妙な振動をしてしまうことでした。この振動をうまく抑えこんでより精度を高くしたものが、光格子時計です。

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