〔PHOTO〕Gettyimages

全米抗議デモ、ついにトランプは「宗教保守」からも見放され始めた

アメリカと「宗教」の複雑な関係

アメリカの知られざる「信仰の力」

8分46秒。ミネソタ州ミネアポリスの警察官デレク・ショーヴィンが、ジョージ・フロイドの首を膝で圧迫し続けた時間である。ショーヴィンは当初、第3級殺人罪と第2級過失致死罪で起訴された。その後、第2級殺人罪に変更され、現場にいた他の3名の警察官も起訴されるに至った。

白人警官が黒人男性を暴力的に死に至らしめたこの事件は、地元ミネアポリスだけでなく、全米の都市で抗議のデモや暴動を生じさせ、各地で略奪や放火にまで発展している。日本でも事件と抗議の様子は大きく報道されているが、センセーショナルな映像だけでは十分に見えてこないものがある。それは、アフリカ系アメリカ人たちの静かな怒りと公正な刑事司法を求める声。そして怒りと声をアクションへと変えていく信仰の力である。

5月25日、ワシントンDCで行われたデモ〔PHOTO〕Gettyimages
 

ノースカロライナで生まれ、テキサス州ヒューストンの黒人集住地区である第3区で育ったジョージ・フロイドは信仰心篤く、ヒューストンでは若い仲間たちとバスケをしながら、かれらのためのメンター(助言者)を務めていたという。人生を立て直すためにヒューストンからミネアポリスに移ったのも、クリスチャン・ワーク・プログラムをつうじてだった。

6月3日、ジョージ・フロイドが殺された場所で、フロイドの家族の弁護士を務めるベンジャミン(ベン)・クランプは、ジョージ・フロイドの息子のクインシー・メイソン・フロイドとともに記者会見をした。

クランプは、2012年にフロリダ州のサンフォードで17歳だった黒人青年、トレイヴォン・ベンジャミン・マーティンが射殺された事件の弁護士を務めた人物である。トレイヴォン・マーティンの事件が起きた際も全米の主要都市ではデモが起き、銃規制の強化を求める声もあがった。当時のオバマ大統領は、もしわたしに息子がいたらその息子はトレイヴォンに似ていただろうと発言して、この事件を皆自分自身のこととして考えてほしいというメッセージを出した。

だがその後も、武器をもたない黒人が命を奪われる事件は起き続け、2014年にはミズーリ州のファーガソンで、2015年にはメリーランド州のボルティモアで、差別への抗議の意味を込めた激しい人種暴動が生じてきた。