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# 新型コロナウイルス

新型コロナ対策であぶない迷走ぶりの新興国…、日本への影響は?

逃げたマネーは戻ってくるか
新型コロナウイルス感染症による死者数が3万人を超えたブラジル、経済対策で失策が続くメキシコ、9度目のデフォルトが確定したアルゼンチン…。本来なら優れたリーダーシップを発揮しないといけないこのときに、迷走している新興国が目立つ。しかし、日本はそれらの国々を、対岸の火事だと笑えるのか…。
米国の投資運用会社で働いた経験があり、『マネーの代理人たち』の著書もある小出・フィッシャー・美奈氏が、新型コロナに翻弄される新興国の最新事情をレポートする。

マネーの出入りで動く新興国市場

マネーが入るから株価が上がる。マネーが出ていくから株価が下がるーー。

グローバル投資運用会社で、よく新興国ファンドのアナリストが嘆いていたのが、「キャピタル(資本)の出入りで決まってしまう」ということだった。外国からの投資マネーが今、新興国に流入しているのか、それとも流出しているのかで市場の流れがほぼ決まってしまい、個別企業の成長性などを一生懸命分析しても、予想が当たらないというのだ。

株式だけではない。国も民間もドル建て債券などの外資ファンディングに頼る新興国では、実体経済までが「キャピタルの出入り」に左右される脆弱さがある。

コロナショックが起きた時、新興国市場からキャピタルが一斉に逃避した。

今のところ、先進国中央銀行の「異次元緩和」が新興国市場にもマネーを送り込んでいるので、5月末現在、新興国全体としては落ち着きを取り戻している。だが個別に見ると、2月下旬から株価が下落したままの国も多い。資金が逃げると同時に通貨安も起きたので、ドル建てではブラジルが約4割、メキシコが3割、トルコ、ロシア、南アがそれぞれ2割程度の下落となっている。

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それでも「新興国投資は、是非続けたい」というグローバル投資家は多い。大きな理由の一つは、イールド(利回り、投資額に対する年間のリターン)の高さだ。

世界的な超低金利の中、投資家がどれだけイールドを切望しているかは、債券市場で近年アルゼンチンやメキシコ、オーストリアなどが発行した「100年債(センチュリーボンド)」を見れば分かる。元本が戻ってくるのは100年先。大正9年に、貴方は今の日本を想像できただろうかーー。とんでもない先の話だが、2〜7%といった高い利率が、投資家には大人気だ。

少しでも高いイールドを求めて、リーマンショック後には新興国に大量の投資マネーが流れ込んだ。新興国の債務残高は2018年までに55兆ドル(約6000兆円)と過去最高を更新し、世銀が与信リスクに警告を鳴らした。新興国GDPの170%近くに相当する、借金漬けの状態だ。