6月 8日 アメリカの物理学者、K・ウィルソン誕生(1936年)

科学 今日はこんな日

地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。

"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

1936年の今日、アメリカの物理学者で、1882年にノーベル物理学賞を受賞したケネス・ウィルソン(Kenneth Geddes Wilson、1936-2013)が誕生しました。

1982年のノーベル賞受賞者たち。ウィルソンは後列の右端 Photo by Getty Images

マサチューセッツ州にあり、アメリカ最古の時計ブランドの名前にもなっている都市ウォルサム(Waltham)で生まれた彼の才能は、若い頃から突出していました。飛び級で大学に入学し、わずか20歳にしてハーバード大学を卒業したのです。

さらに1961年には、マサチューセッツ工科大学で日本の博士号に相当するPh.Dを取得しました。このとき彼の指導教官だったのは、「クォーク」の提唱者として知られるマレー・ゲルマン(Murray Gell-Mann、1929-2019)です。

 〈9月15日 物理学者のM・ゲルマンが生まれる〉

その2年後には、ウィルソンはコーネル大学の教壇に立って物理学を教えるようになりました。当時研究論文をそれほど発表していなかったにもかかわらず安定した職を得たことは、彼が自らの研究にじっくり取り組める理由の1つだったとされています。

1970年、彼は相転移の臨界についての論文を発表します。相転移とは、物質の状態である相が、ある温度や圧力、比熱において変化する現象です。

そして、ある物質が相転移する境目の状態が臨界です。例として、水が0度で氷になったり、液体のヘリウムを低温にすると超伝導体の性質を示したりすることが挙げられます。

 

ウィルソンは彼の論文で、そういった相転移における臨界の種類は多いものの、それらには共通点が見られることを示しました。たとえば、液体・気体間での相転移と常磁性体・強磁性体間での相転移では、3次元モデルにおける指数が共通するそうです。

こうした研究が認められ、彼は1982年にノーベル物理学賞を受賞しました。

さらに、この研究は他分野でも応用されています。近年、地球自体が人類によって巨大規模の相転移に追い込まれ、氷河期の終焉のような劇的な変化をする、と予測する論文が、ウィルソンの研究を基礎として書かれたのです。

ウィルソンは相転移の他にも、原子物理の分野で「格子ゲージ理論」を発表しています。これは、2008年にノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎博士(1921-2015)による「量子色力学(Quantum Chromodynamics:QCD)」のもとになりました。

南部陽一郎 Photo by Getty Images

ちなみに、同じく「ケネス・ウィルソン」という名を持つ人物には、ネッシーが写っているとされた「外科医の写真」を撮った医師もいます。彼について興味を持たれた方は、こちらをご覧ください。