阿川佐和子を育んだ一家が囲む「危ない食卓」のおいしい想い出

阿川家のレシピも詰まった新刊エッセイ

父の最期の言葉は「まずい」

―新著『アガワ家の危ない食卓』のタイトルの通り、おいしそうな料理が並ぶアガワ家の食卓が"危ない"理由の一つは、食いしん坊で怒りん坊、「旨い!」も「まずい」も率直に仰るお父様(作家・阿川弘之さん)の存在でした。

阿川さんに最期にかけられた言葉が「まずい」だったとか。

亡くなる2日前、父が入院していた老人病院に、食べたがっていたお刺身を持参したんです。ついでに、父が好んでいた「とうもろこしの天ぷら」を作って持っていったら、「まずい」とはっきり言われました。人一倍、食い意地の張っていた父の正直な感想とはいえ、娘としてはトホホですよ。

―一方、切り干し大根と、ビールの注ぎ方については、無条件で褒めてくれたとあります。

ビールの注ぎ方を褒められてもね(笑)。妹尾河童さんに教えていただいたやり方で、詳しくは本に書きましたが、泡の立て方にコツがあります。切り干し大根は、料理研究家の野口日出子先生のレシピで、大根のしゃきしゃき感が残るように作るんです。それを父は気に入ってくれました。

 

私は料理研究家ではありませんし、本格的な作り方も知らないので、人様に披露できるようなメニューなんて持っていません。ただ父が食に貪欲だったせいで、台所に立っていた歴史が比較的長いうえに、自分自身も食べることが好きで、おいしいものを作りたいという欲もあるほうかも。

食べ物にまつわる思い出が多くて、今回、ここ数年で書いてきたものを一冊にまとめてみたら、結果的に、阿川家の食卓の話がたくさん入ったエッセイ集になってしまいました。