真につながれる人の数の限界は150人?

食料生産、つまり農耕牧畜を始める前まで、人間は、この150人くらいの規模の集団で狩猟採集生活を送っていました。天の恵みである自然の食物を探しながら移動生活をする人々には、土地に執着したり、多くの物を個人で所有したりといったことがありません。限られた食料をみんなで分け合い、平等な関係を保って協力し合いながら移動生活を送るためには、150人が限度なのでしょう。そして、現代でも、このような食料生産をしない狩猟採集民の暮らしをしている村の平均サイズが、実に150人程度なのです。

言い換えれば、150人というのは、昔も今も、人間が安定的な関係を保てる人数の上限だということです。皆さんの生活でいえば、一緒に何かを経験し、喜怒哀楽を共にした記憶でつながっている人ということになるでしょうか。ぼくにとっては、年賀状を出そうと思ったとき、リストを見ずに思いつく人の数がちょうどこのくらいです。互いに顔がわかって、自分がトラブルを抱えたときに、疑いもなく力になってくれると自分が思っている人の数ともいえます。

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今、ぼくたちを取りまく環境はものすごいスピードで変化しています。人類はこれまで、農耕牧畜を始めた約1万2000年前の農業革命、18世紀の産業革命、そして現代の情報革命と、大きな文明の転換点を経験してきました。そして、その間隔はどんどん短くなっています。その中心にあるのがICT(Information and Communication Technology/情報通信技術)です。インターネットでつながるようになった人間の数は、狩猟採集民だった時代からは想像もできないくらい膨大になりました。

一方で、人間の脳は大きくなっていません。つまり、インターネットを通じてつながれる人数は劇的に増えたのに、人間が安定的な信頼関係を保てる集団のサイズ、信頼できる仲間の数は150人規模のままだということです。

テクノロジーが発達して、見知らぬ大勢の人たちとつながれるようになった人間は、そのことに気づかず、AIを駆使すればどんどん集団規模は拡大できるという幻想に取り憑かれている。こうした誤解や幻想が、意識のギャップや不安を生んでいるのではないか。ぼくはそう考えています。そして、子どもたちの漠とした不安も、このギャップからきているのではないでしょうか。

▶次回は、6月16日に更新予定です。お楽しみに!