人間の脳はなぜ大きくなったのか?

人間は、進化の歴史を通じ、一貫して付き合う仲間の数を増やしてきました。これは、人間の祖先が熱帯雨林からサバンナという危険な場所に進出したことが関係しています。

長い歴史のある時点において、おそらく地球規模の寒冷・乾燥化が起こり、それによって熱帯雨林が分断され、そこで暮らしていた動物たちはサバンナに出て行くか、森が残る山に登るか、低地に散在する熱帯雨林に残るかの選択を迫られたのでしょう。結果的に人間は熱帯雨林を出ました。

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そこで、いくつかの特徴を発達させたのです。その一つが集団の大きさです。危険な場所では、集団の規模は大きいほうが有利です。数が多ければ、一人が狙われる確率は低くなるし、防衛力も増します。危険を察知する目がたくさんあれば、敵の発見効率も高まります。

実際、森林ゾウとサバンナゾウでは、サバンナゾウのほうが、身体も大きく、集団規模も大きい。人間も、危機から自分の命、そして仲間の命を守るために、集団の規模を大きくしなければなりませんでした。

ただし、集団を大きくすると、食物や安全な休息場所をめぐってトラブルが増えます。仲間の性質や、自分との関係をきちんと頭に入れておかないとうまく対処できなくなります。そのためには脳を大きくする必要がありました。皆さんの中には、人間の脳は、言葉を使い始めたことで大きくなったと思っている人がいるかもしれませんが、人間が言葉を発したのは7万年ほど前にすぎません。一方で、脳が大きくなり始めたのは、それよりずっと以前の約200万年前に遡ります。言葉を使ったから脳が大きくなったのではないのです。