ハンコから脱却しても「電子署名」という遺物が日本のIT化を妨げる

マイナンバーが何の役にも立たない現実
野口 悠紀雄 プロフィール

マイナンバーを活用すべきだ

日本のマイナンバー制度も、本来は上記のようなことの実現を目指して導入されたものだ。

実際、内閣府の説明サイトをみると、つぎのように書いてある。

「それぞれの機関内では、住民票コード、基礎年金番号、医療保険被保険者番号など、それぞれの番号で個人の情報を管理しているため、機関をまたいだ情報のやりとりでは、氏名、住所などでの個人の特定に時間と労力を費やしていました。社会保障、税、災害対策の3分野について、分野横断的な共通の番号を導入することで、個人の特定を確実かつ迅速に行うことが可能になります」

要するに、実在する個人を、マイナンバーという単一の番号だけで把握することを可能にしようというのである。

これは、エストニアや中国の場合とまったく同じ目的だ。

ただし、マイナンバーの場合には、いまだにそれが孤立して存在しているだけで、他のシステムとの関連付けがなされていない。

このために、実際には何の役にも立たないものになっているのである。

今回の現金給付で、各地方公共団体が、オンラインで送られてきた申請データをプリントアウトし、住民基本台帳のデータとの突き合わせなどを手作業で行なわざるをえず、大変な苦労をしていると伝えられている。信じられないようなことだ。

マイナンバー制度は、何も役に立たないどころか、地方公共団体に余計な労力負担を掛けるだけの制度になってしまっている。

ちなみに、コロナ対策の一環としての現金給付において、アメリカはSSNを用いて迅速に行うことができた。

いま必要なことは、マイナンバー制度を基礎として、これを他の仕組みと有機的に連結させ、エストニアのような制度を確立することだ。

それにもかかわらず有識者会議は、新しい制度を作って屋上屋を重ねるようとしている。

 

現在の電子署名のシステムには、すでに既得権益者が発生してしまっている。それらの人々の職を守るために、古いシステムから脱却できないというようなことはないだろうか?

このまま進むと、「ハンコ文化からは脱却できたものの、今度は別の迷宮入り」といった事態になりかねない。

編集部からのお知らせ!

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/