ハンコから脱却しても「電子署名」という遺物が日本のIT化を妨げる

マイナンバーが何の役にも立たない現実
野口 悠紀雄 プロフィール

エストニア方式を導入すべきだ

公開鍵暗号による電子署名の仕組み自体は、すでに確立された技術であり、仮想通貨を初めとして、インターネット上のさまざまな取引で広く用いられている。

問題は、「ある公開鍵を持っている個人(あるいは法人)と、実在する個人(あるいは法人)とが1対1に対応している」ということの証明なのだ(「公開鍵」とは、公開鍵暗号のシステムで用いられる数字と記号の組み合わせ)。
 
この問題は、国が国民背番号制度を実現し、それと関連付けることで行なうべきものだ。

エストニアでは、この方式が採られている。その概要を前回述べたが、より詳しく説明すれば、つぎのとおりだ。

国民一人一人が「国民ID」(正確には、personal identification code。個人識別コード)という番号を待つ。

電子認証(本人確認)とサインをデジタルに行うために必要なのは、ICチップを埋め込んだeID カードだ。

専用のカードリーダーに差し込み、暗証番号を入力すると、完全に無料で、電子署名を行うことができる。

ブロックチェーン上に契約締結日などのタイムスタンプを記録することによって、改ざん防止を実現できる。また、電子署名を半永久的に記録することが可能となり、有効期限問題も解消している。

このため、インターネット接続環境とパソコン、カードリーダーさえあれば、あらゆる行政手続きを自宅やオフィスから行える。ほぼ100%の国民に普及している。

確定申告の95%、法人設立手続きの98%、薬の処方の99%がオンラインで行われている。

住民登録、年金や各種手当の申請、自動車の登録手続き、国民健康保険の手続き、運転免許の申請と更新、出生届提出や保育園・学校への入学申請、学校の成績表へのアクセス、銀行口座、病院の診療履歴へのアクセスもできる。

さらに、オンライン会社登記や電子投票などもできる。

中国では、18桁の身分証番号を用いる身分証のシステムが、すでに1995年に導入されている。 記載項目は、氏名・性別・民族・生年月日・住所などだ。身分証番号は、生まれた日に決定され、終生不変の個人番号となる。満16歳になると、有形の身分証が交付される。

中国は、2019年10月に「暗号法」を制定した。これは、さまざまな目的に用いられる秘密鍵を国家が管理するための基礎を作るのが目的ではないかと想像される。

 

アメリカでは、SSN(Social Security Number:社会保障番号)が用いられている。アパートの賃貸契約や就労、免許証の取得など、アメリカで生活するにはさまざまな場面で必要とされる。これがなければ、満足に生活をすることができない。

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