10年後の未来は、どのような世界になっているのでしょう。
日本科学未来館の「ビジョナリープロジェクト」のなかで私は、一般応募から選ばれた大学生から26歳までの社会人女性3人と一緒に、「AIに子育てを任せられるか」というテーマについて考えています。
仕事をしながら子どもと暮らすための手段として、AIを使えるか――このテーマは、若者世代の彼女たちから出てきたものですが、これは単純に明るい未来を考えるというよりも、もやもやした葛藤を伴うものでした。
十分に子どもと向き合う時間が持てないかもしれない、という働く女性をめぐる不安が反映されているようです。
AIに子育てをゆだねたいけれど、もしそれで万事うまくいったとしたら、親としての自分の役割はどうなるのか……そんな戸惑いに似た気持ちが見え隠れしています。AIと私たち人間との関係を暗示させるものといえましょう。
問題を「解決」するために生まれたテクノロジーのはずですが、そこに葛藤が生まれるのです。
このもやもやとした気持ちの背景には、私たちが考えていくべき課題が隠れています。AIに子育てを任せるという行為には、「発達」の2つの重要なポイントが含まれているからです。
そのポイントについて、説明していきましょう。
発達とは子どもが大人になるまでのこと。大人になったら発達もおわり。子どもが生まれたら自然と「親」になる――多くの方がそのように思いこんでいないでしょうか?
それは、大きな誤りです。