私たち自身も、私たちが生きているこの世界も、すべては量子でで
身近な自然現象も、科学技術も、量子の存在がなければ成り立たな
ところが、この量子というやつ、なんとも捉えどころのない不思議
世界の根本を作る根源的な存在で、量子についての理解は今後ますます必須になっていくはずなのに、その姿を追い求めるとフワフワと逃げていく。なんとももどかしい
量子って一体なんなのでしょう?
話題作『時間とはなんだろう』の著者、松浦 壮さんが『量子とはなんだろう』で繰り広げるのは、量子論の “直感的”理解への旅! その一端を垣間見てみたいと思います。
今回は、本書の前書きを特別編集してお届けします。
いま見えている世界は「本当の世界」ではない!?
顔を上げてまわりを見渡してみてください。私は電車の中で原稿を書くことが多く、今もまた電車の中でキーボードをたたいていますが、私のまわりではつり革が揺れ、空き缶が転がり、部活帰りらしい学生さんたちが談笑しています。
世界には日々いろいろなことが起こりますが、本を書き始めたからといって世界そのものが変わるわけもなし。身の回りで展開される世界は今日もいつも通り。ザ・日常です。皆さんのまわりもきっと似たり寄ったりでしょう。
ここで、ちょっと不思議な質問をしてみましょう。
今見ているこの世界は、本当に世界そのものだろうか?

「痛々しい本を手に取ってしまった……」と本を閉じるのはちょっと待っていただきたい! 驚くことなかれ。ともすれば熱に浮かされた若者が口走りそうなこの疑問は、実は現代物理学の核心のひとつです。
そして、物理学は大真面目にこう答えます。
見えている世界は世界そのものではない
これは決して誇張でも煽り文句でもなく、「ものは何からできているのだろう?」という問いを探究し続けてきた人類が辿り着いた「量子」が従う理(ことわり)のひとつです。どうやらミクロ世界の住民である量子は、世界の大本であるにもかかわらず、私たちが直感的に思い描くのとはまったく違った法則に従って動いているようなのです。
ヒントは意外と身近なところにあります。例えばこの本。皆さんは今、間違いなくこの本を見ているはずですが、皆さんが今見ている本は「本そのもの」ではない、と言ったら驚くでしょうか? ですが、これはまぎれもない事実です。