こちらもまた国によって感染状況の違いがあるため、一概には言えない。ただ、厳しい外出制限には、病院の受診が抑制されることで持病が悪化するなどの「副作用」がある可能性を指摘しておきたい。

過去の災害のデータをもとにシミュレーションしたインドでの研究によると、外出自粛により糖尿病などの持病の悪化が示唆されている(※7)。また、中国の研究ではメンタルヘルスの悪化も懸念されている(※8)。いすれにせよ、まだデータが限られており、さらなる研究がなされる必要がある。

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今後日本では、第2波、第3波に対して、「リスクの高い人々に自粛を要請し、若年層は教育活動や経済活動をする」という方針がとられることが長期化を見据えてあり得るかもしれない。筆者はこうした考えに大筋では賛成だが、高齢者や持病のある人に外出自粛を課すとすれば、持病の悪化や身体機能の低下をどのように防ぐかを併せて考えていく必要があるだろう。

高齢者に関連して言えば、現在、欧米で死亡者が急増している最も大きな要因は、高齢者施設での感染拡大であることがわかっている。日本では高齢者施設で大きなクラスターが相次いでいないため、「介護崩壊」が起こっていないことが低い死亡率に寄与していると考えられている。

アメリカでは死亡者の35%が高齢者施設に関連している(※9)。高齢者施設における感染対策を引き続き重点的にやっていくことが重要だ。その上で、高齢者施設や病院でクラスターが発生し、都道府県単位での患者が増えたときに、一般社会に自粛を促すかどうかを考えなければならない。

新規感染者数に対する考え方は、高齢者施設や病院でのクラスターと市中の経路不明感染とでは意味合いが異なる。高齢者施設での感染が急増したとき、一般市民の活動を止める意義は乏しいと筆者は考える。