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カンヌ他「映画祭のバーチャル化」で起こりうる深刻な問題

コロナ下の映画界で起きている変化

新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、例年5月に開催されているカンヌ国際映画祭が中止に。ほかの映画祭の多くも中止かバーチャル化を余儀なくされたが、毎年9月に開催されるヴェネチア国際映画祭には例年通りスターたちが一堂に集い、開催される予定だという。ただし、ウィルス感染を避けるために様々な処置が検討されていることから、おそらくイベントの形はいつもとは違うものになりそうだ。

昨年のヴェネチア国際映画祭では、是枝監督の『真実』が日本人監督として初めてオープニング作品に選ばれた〔PHOTO〕Getty Images

映画祭が中止やバーチャル化に追い込まれたことは、映画界にどのような影響を及ぼしているのか。ヨーロッパ映画を中心に紹介している独立系映画配給会社「セテラ・インターナショナル」の代表取締役である山中陽子氏に話を聞いた。

【山中陽子 プロフィール】
ヨーロッパ映画を中心に配給する「セテラ・インターナショナル」の代表取締役。フランスの名優ジェラール・フィリップの映画を上映するために独立系映画配給会社を設立。主な配給作品は『から騒ぎ』(94年) 、『最高の恋人』(95年)、『クロワッサンで朝食を』(13年)、『ハンナ・アーレント』(13年)、『パレードへようこそ』(15年)、『はじめてのおもてなし』(17年)、『最高の花婿 アンコール』(20年)など。6月6日に『お名前はアドルフ?』が公開される。

オンライン化で薄れる映画祭の特色

映画祭には新作のお披露目やスターのレッドカーペット以外にもさまざまな役割がある。映画祭にはフィルムマーケットが併設されており、ここは世界中から集まってくる製作者、作品の売買を仲介する海外セールス会社(セラー)、そして各国の配給会社(バイヤー)が配給権をめぐって熾烈な争奪戦を繰り広げる場所なのだ。

とすれば、バーチャル化したフィルムマーケットでは映画の売買はどのように行われるのだろうか。映画祭やフィルムマーケットを待たずとも、海外セールス会社や製作者は普段から新作の売り込みをメールなどで行っていると聞くし、映画の試写用のサンプルもオンラインで簡単に観れるはずだ。セラーとバイヤーも商談したいと思えば、いつでもチャットアプリやZoomで話せるのではないだろうか。

 

「たしかにオンラインで完結できるところもありますが、今後フィルムマーケットがバーチャルになっていくと、各映画祭の特色や映画祭に漂う独特の雰囲気、空気感を味わえないので、どこの映画祭での映画か、というものが希薄になる恐れはあります」(山中氏、以下同)

これは、それぞれの国際映画祭の特色が薄れてしまい、各映画祭の存在意義がなくなってしまうことでもあるという。バーチャル映画祭でも新作は鑑賞者まで届くだろう。しかし、オンライン化された映画祭では現地の高揚感や緊張感は得られないし、そもそも、映画祭は開催地の文化的、観光的イベントでもあるから、オンライン化されることにより開催地は経済的な損失を被ることにもなる。

とはいえ、フィルムマーケットのオンライン化は海外へ行かなくてもよいのだからコストも低く抑えられ、交渉の効率を高めるような気がするが、そう簡単な話でもないらしい。