無痛分娩中の事故で亡くなった長村千恵さん

「息が苦しい…」無痛分娩で異常を訴え、亡くなった31歳女性の無念

なぜ医師はいったん不起訴になったのか

分娩中に呼吸が停止

「初めまして」とわが子を抱き寄せるはずだった女性は、その顔を見ることすらできずに、無念にもこの世を去らねばならなかった。

アメリカやフランスでは一般的になりつつある「無痛分娩」で起きた医療事故による悲劇。業務上過失致死容疑で書類送検された医師は、いったん不起訴になったが、検察審査会の「不起訴不当」議決を受けて検察が再捜査を実施。検察は近く、起訴するかどうかの最終判断を下す見込みだ。

亡くなったのは長村千惠さん(享年31)=写真 。千惠さんは、第2子の誕生を心待ちしていたが、17年1月10日、産婦人科医院「老木レディスクリニック2」(老木正彰院長・大阪府和泉市)で第2子の無痛分娩中、呼吸が停止した。

千惠さんは同日、別の病院へ転送されたが、酸素不足から到着時には脳死状態と判断され、同月20日、搬送先の病院で死亡した。

31歳の若さで亡くなった長村千恵さん。抱いているのは長女
 

19年10月10日の検察審査会による不起訴不当の議決(要旨)は、その理由を次のように記している。

「被害者の死亡という痛ましい結果を踏まえ、本件不起訴記録並びに審査申立書を精査し、慎重に審査した結果、本件被疑者には、患者が自らの命を託した医師に対する信頼を根底から覆すものというべき過失があると判断し、検察官に再考を求めるため、上記趣旨のとおり議決した」

無痛分娩とは、局所麻酔で陣痛に伴う痛みを和らげ、出産時の疲労を軽くする出産法である。産後の回復が早いなどのメリットから、フランスでは妊婦の6割以上、アメリカでも4割以上が無痛分娩を行っている。

日本でも無痛分娩を選ぶ妊婦が増えており、実施率は07年の2.6パーセントから16年には6.1パーセントに。しかし、その一方で11年以降、新聞に報道されているだけで、無痛分娩による死亡事故が5件、重い障害が残った事故が2件発生している。