なぜあなたは「出世したい」のか? ヒトが権力と名声を求める根本的理由

それは生き残るための戦略だった

われわれホモ・サピエンスは動物であり、霊長類の一種だ。サピエンスの行動パターンをつかさどる心理プログラムはその他の動物と同様、母なる進化のプロセスによって、少しずつ形成されてきた。

1970年代に、動物の行動を「進化(=自然選択)のロジック」から理解しようとした試みが進化生物学や社会生物学だ。

その旗手の一人であるリチャード・ドーキンスは、生物個体とは遺伝子のための乗り物であり、遺伝子の保存に努めるサバイバルマシンだと言った。*1

群れで生活する動物が、お互いに競い合うのはなぜだろうか?究極的に言うと、自らの遺伝子の保存のためだ。動物が遺伝子を残すためには、自らの身体の生存確保と再生産(=reproduction, 生殖)という2つのミッションを達成しなくてはならない。

いったいなぜそんな生物学的目標を目指さなくてはならないのか?──べつに目指さなくてもよいのだが、目指す気が(全く)なかった個体とその遺伝子は淘汰され消えてきたため、現在生き残っていないのである。

もちろん、動物たちは進化生物学や遺伝子学の論理を理解しているわけではないので、彼らのアタマにある「目標」とは「遺伝子を残すこと」ではない。われわれサピエンスだってそうだ。動物はふつう、もう少し日常的で、具体的な目標を追い求めている。

その一つが「地位/status」だ。

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「より上」を目指すワケ

なぜわれわれを含め動物は、地位の向上を目指すのか。

群れの中で高い地位を得た動物は、高いRHP (=Resource-Holding Potential, 潜在的な資源保持能力)を持つとされる。ここでいう資源とは生物学的な資源、すなわち食糧、なわばり、安全な寝場所、仲間の支持、異性へのアクセスなどのことだ。動物はこれらを獲得することによって、結果的に自らの適応度(=遺伝子の生存可能性)を上昇させることができる。

最近の研究によれば、ニホンザルの群れにおいては「温泉に入ることができる優先順位」が資源の一つであるらしい。*2 単純に気持ちがいいということもあるが、適応度という観点からは、体温を保ったりストレスを引き下げることでエネルギーを節約できる効果があるというのが重要だろう。