ナゼ?「なでると軽くなり、叩くと重くなる」不思議な石の正体

実際に奈良まで行って確かめた
小林 公夫 プロフィール

「飛鳥時代に起きた壬申の乱の際、大海人皇子は、吉野のほうへ必勝祈願に出かけました。その際に弥山の山頂(今の天川大辯財天社の奥宮)から天女が現れたという伝説があります。大海人皇子は戦いに勝ち、その後天武天皇となりました」(天川村役場・中窪大喜氏)

いずれにせよこの地は、今なお多くの修験者が山に入り修行をする神秘の場であるらしい。私は、どうしても自ら天川村のこの寺に出向き、自らの目でなで石をあらためてみたいと意を強くしたのである。

 

山また山を越えて

新型コロナウイルスの感染が広がれば、取材が困難になるおそれがあった。3月初め、住職にお願いをして、移動が難しくなる前に取材を決行した。

長旅だった。初めて乗る近鉄特急の車窓から眺める風景は下市口駅に近づくにつれ趣が出てきた。洞川温泉行きのバスに乗り換え、国道309号線に入ってしばらく走った辺りから、山肌が急激に近づいてきた。道の両脇には樹齢を感じさせる吉野杉が高く林立し、晴天にもかかわらず薄暗く感じるところさえある。

つづら折りの道は次第に急カーブが多くなる。当初穏やかだったバスのエンジン音は、続けざまの登坂に唸りっぱなしだ。気圧の変化だろうか、耳に痛みを感じる。

ほどなくして視界が開けた。息を飲んだ。周囲を見晴らすと、いつの間にか周りを囲む高い山々の頂上とほぼ同じ高さまで登っている。霧が降りている日ならば、まさに雲海であろう。

峠には、3000mにも及ぶ長いトンネルが抜かれている。行く手に見える出口の小さな光が、次第に大きくなっていく。突然眩しさを感じ、まだ光になじまない私の目の前に、天川村は忽然と姿を現した。