武漢ウィルス禍は、米中「第2次冷戦」の構図を固めるのであろう。
5月下旬、ドナルド・J・トランプ(米国大統領)麾下の米国政府は、「中国に対する戦略的アプローチ」と題した報告書を議会に提出した。この報告書は、過去の歴代政権による対中「関与」政策を失敗と断じ、トランプ政権の対中強硬姿勢を濃厚に反映しているけれども、その対中強硬姿勢をトランプ政権だけの性向と観るのは,誤りであろう。
ウォルター・ラッセル・ミード(政治学者)は、『ウォールストリート・ジャーナル』紙上論稿(5月13日配信)の中で、ジョセフ・R・バイデン(前米国副大統領)が政権を奪回した場合の対中姿勢について、次のような展望を記している。
ミードが指摘するように、トランプであろうとバイデンであろうと、次の大統領が率いる米国政府の対中姿勢は、基調としては変わらないであろう。加えて、米国連邦議会では、香港、台湾、ウィグルの情勢に絡んで、中国政府に敵対的な色彩を持つ法案が続々と可決している。
こうした米国の全般的な対中姿勢を前にして、王毅(中国国務委員兼外相)は、5月24日の記者会見の席で、「米国のある政治勢力が中米関係を人質にして、両国関係を新たな冷戦の瀬戸際へと押しやっているということが、われわれの目を引いている」と語った。
米中「第2次」冷戦状況を招いたのが、「米国のある政治勢力」の策動の類と認識されている事実にこそ、米中確執を激化させた中国政府における対米認識の歪みが反映されている。