ゼロ・ウェイストの哲学を、
旨いビールと共に

RISE & WIN Brewing Co.

外壁には上勝産木材の端材を再利用。看板山羊のヤギヨシさんもお散歩中。

〈RISE & WIN Brewing Co.〉は、勝浦川の源流から引いた清らかな水と、熱きクラフトマンシップにより地元に根付いた個性的なクラフトビールを作っているブリュワリーだ。

「この『LEUVEN WHITE』は、上勝特産の柚香という柑橘を使ったビール。ポン酢の原料として果汁だけ使い、捨てられていた柚香の皮を香りづけとして使っています。ごみを出さないという観点からオリジナルのグラウラーを販売して、海外ではポピュラーなビールの量り売りも行っています」と、代表の田中達也さん。2019年に完成した赤いラベルの『YOU’VE BEEN POST』もオススメだ。

オリジナルクラフトビール。左から、上勝特産の柚香を使った「LEUVEN WHITE」、勝浦のみかん果汁を使った「Humming Bird’s Nectar」、オレゴン産ラズベリーで仕込んだ「YOU’VE BEEN POST」。タップルームは東京・東麻布にも。

「オレゴン産のラズベリーで仕込んだサワーで、ポートランドにある〈Ex Novo Brewing〉とコラボしたビールです。彼らはある一定額の売り上げを超えると、利益を寄付している非営利団体のブリュワリー。そのマインドに共感して、一緒にと申し出て実現しました」

この気鋭の醸造所誕生の背景には、土地との密接な関わりがある。徳島市内で食品の衛生検査会社を営んでいる田中さんは、町から相談を受けて町おこし事業に取り組むことに。

20年ほど眠っていた製材所を再生させたビールの第二生産工場〈KAMIKATZ STONEWALLHILL CRAFT & SCIENCE〉。ポートランドの醸造設備メーカーに特注した製造タンクを導入し、若きブリュワーたちが個性あふれるビール作りに励んでいる。

「ゼロ・ウェイストの理念に基づいて、最初は量り売り専門の〈上勝百貨店〉を始めました。が、人口2千人に満たない町では正直商売が成り立たない。理念だけ高くても生産性がなければ意味がないし、人を呼べるコンテンツがなければ町は活性化しないと痛感した。その頃、日本でもクラフトビールが盛り上がっていて、地のものを生かしたビールを作ったら面白いんじゃないか、と。単純な思いつきでしたが、視察で訪れたポートランドでビールを量り売りする光景と出会い、上勝の理念とビール作りの親和性にピンときたんです」

独創的な形の棚や机も、町のごみステーションにあった廃材をリメイク。

アメリカからブリューイング・ディレクターを迎えて本場仕込みのビール製造を開始。地産の柑橘を再利用し、ビール作りで出る麦芽粕もグラノーラなどの材料として再利用している。店舗造りにもゼロ・ウェイストの考えが活きていて、製材所で出た上勝産木材の端材やごみステーションに集まった古い民家の建具を再利用。一昨年には、古い製材所をリノベーションしたビールの第二生産工場も完成し、各地から若いブリュワーたちが集まり雇用も生み出している

古い民家の建具をパッチワーク状に組み合わせた高い壁面が印象的。

開業から4年。「当初は、ゼロ・ウェイストという言葉すら知らないお客さんが多かったのですが、今では“ゼロ・ウェイストの町”という前提で世界中から人々が訪れます」と、この数年で世間の認識の変化を実感している。また、徳島市内から毎日通勤していたスタッフは、今年、上勝町への移住を決めた。そのスタッフは言う。

2019年から庭に中古のキャンピングカーとテントを設置。1日1組限定で宿泊可能。

「ゼロ・ウェイストに関心を持って来てくれるお客さんに対して、実際の生活者としてリアルな話を伝えたいと思ったんです。けれど、働きに来るのと暮らすのとでは、大違いでしたね。ごみは毎日の暮らしに関わること。完璧な分類やリサイクルを目指すのは、正直、大変です。でも、人それぞれ、やれることをやろうよ、という柔らかい気持ちで向き合うことが継続のコツかな、と気づき始めました

地の資源を余すところなく生かし、町の理念を見事にカタチにした上勝のブリュワリー。ゼロ・ウェイストの哲学が、旨いビールと共に世界へ発信されているのだ。

RISE & WIN Brewing Co.
常時4種類と期間、数量限定のクラフトビールが楽しめる。BBQや貸し切りディナー、宿泊も。いずれも要予約。●徳島県勝浦郡上勝町大字正木字平間237-2
 ☎0885-45-0688 営業時間:11:00~17:00(17時以降予約制)、土・日・祝10:00~18:00(18時以降予約制) 定休日:月・火
www.kamikatz.jp 
※現在の営業状況は公式情報を事前にご確認ください。