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ネット中傷「自分なら訴えてやる」と思っている人に知ってほしいこと

「訴訟のハードル」当分は高いまま

女子プロレスラーの木村花さんがSNSでの匿名の誹謗中傷に悩まされ命を断ったことをきっかけに、コメント投稿者に対する厳罰化や、運営会社がネット上の言論空間をより厳しく管理すべきだという声が高まっている。

確かに、日本の法制度では匿名で書き込んだ側が圧倒的に有利な立場にある。しかし一方で、厳罰化や管理を強めることが、本当に木村さんの死を繰り返さないための再発防止策になるのか。

 

勝利までの「長い道のり」

「現時点では、SNSで激しい誹謗中傷に遭ったら、とにかくスマホとパソコンの電源をオフにするしかない」。ネット中傷案件に詳しいある弁護士はこう話す。

ネット上で誹謗中傷を受けた被害者が、発信者を名誉棄損の罪などで訴えたり書き込みの削除を求めたりする場合、プロバイダ責任制限法に基づいて、SNSの運営会社やインターネットプロバイダーにIPアドレス(ネット上の住所)などの発信者情報の開示を求めることができる。

しかし、被害者が運営会社に直接申し立てても、個人情報保護の観点から率先して開示に応じるケースは少ない。弁護士を雇い、裁判所に開示請求の訴えを起こし、業者側に命令してもらうことになるのが一般的だ。

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しかも、IPアドレスを入手した後も、さらに携帯電話会社などに問い合わせて書き込み者の氏名や住所を開示してもらう必要があり、再度裁判所に訴えを起こす必要が出てくる。

「IPアドレスの開示に2~3か月、氏名や住所までの特定でさらにおよそ半年かかるので、相手を特定して訴えるまでには、最低でも約1年必要になります。そこからようやく裁判が始まるので、全部で2年程度は覚悟しないと、ネット上の誹謗中傷は消せないということです。

裁判に勝っても、損害賠償額は取れて100万円がいいところで、弁護士費用も数十万円はかかる。2年かかってもその程度しか得るものがない上に、現実には昼間から仕事もしないでツイッター中毒になっている支払い能力のない人間や、中高生などの未成年者が書き込んだケースも多く、完全な取りっぱぐれになる可能性も高い。

タダで匿名アカウントを登録して、ものの数秒でいくらでも誹謗中傷を書き込めることを考えれば、あまりにもバランスの悪い、不公平な法制度だと言わざるを得ません」