たとえばスマートフォンの画面に対応して、縦スクロールで読まれるようになるなど、時代にあわせてどんどん進化していく最先端の表現、マンガ。この分野は、実は「過去の歴史」と、親和性の高い世界でもあります。
関羽の「そんな物はない」、司馬懿の「これは孔明の罠だ」のコマが、すっかりネットのミームとして定着し、メッセージツールのスタンプにもなっている横山光輝氏は、『織田信長』(1985)、『豊臣秀吉』(1989)など、山岡荘八氏の戦国期の英雄を取り上げた小説のマンガ化も手掛けていらっしゃいます。
もちろん戦国時代だけではありません。里中満智子氏の『天上の虹』(1983)、山岸凉子氏の『日出処の天子』(1980)など、特に少女マンガでは古代の王朝を扱った名作も多い。
『天上の虹』の主人公は、持統天皇。天智天皇(中大兄皇子)の娘であり、天武天皇(大海人皇子)の妻。そして自分も天皇に即位した女帝。天照大神のモデルになったという説もあり、「大化の改新」からこの持統天皇にかけての時代に「日本という国ができた」といわれますが、その時代の政治や権力闘争をマンガにしてしまうのだから凄い。
『日出処の天子』は厩戸皇子が主人公。美しく賢い。しかしそれだけではなく謎のサイキックパワーを持ち、生みの母でさえも怖れを抱く「魔性を帯びた存在」という驚きの設定で、かの聖徳太子が描かれます。
厩戸皇子と蘇我毛人(後の蝦夷。「乙巳の変」のときに自殺してしまった人だ)の関係もドキドキしますが、当時の朝廷や豪族たちの猛々しい陰謀劇も目が離せません。