問題が山積みの「海」を変えるために、ゼロ・ウェイストやビーチクリーンなど日本各地でさまざまな取り組みが行われています。そこで、列島のSDGsの“今”をご紹介! 今回は、寒天などの原料で作られた「可食性フィルム」を開発した企業に注目しました。

寒天でごみを減らす、
「かんてんぱぱ」の挑戦

寒天の可能性を追い求め、
たどり着いた可食性フィルム

長野県・伊那市に本社を構える伊那食品工業は、日本市場における「寒天」のトップメーカーだ。寒天原料を食品や化粧品、医療品メーカーに卸すほか、「かんてんぱぱ」という自社ブランドで家庭用商品の製造・販売をしている。

世界中の産地を調査して良質な海藻を収穫。

“海なし県”にあるこの会社が、2019年、海ごみゼロアワードの審査委員特別賞を受賞した。受賞したのは寒天などの原料で作られた可食性フィルムで、これは現在使用されているプラスチックフィルムをこのフィルムに置き換えることで、海洋汚染の原因のひとつであるプラスチックごみを削減することができるというものだ。

お客さんで賑わうガーデン。

そもそも伊那食品工業は「会社は従業員の幸せのためにある」という理念のもと、会社を成長させ続けてきた。緑豊かな伊那谷に、社員が気持ちよく働ける公園工場を作りたい。一本でも多く緑を残して、自然の中で働きたい。そうしてできた本社には、地域の人も足を運ぶようになり、憩いの場になっていったという。そこで本社の敷地を〈かんてんぱぱガーデン〉と名付けて開放し、ショップやレストラン、さらにはミュージアムなどもオープンさせたのだった。今では伊那市の重要な観光スポットのひとつになっている。

寒天の分析や研究を行う分析室。

同社の専務を務める塚越亮さんはこう語る。

「社員のための美しい環境が新たにお客さんを呼び、現在では年間40万人もの方が訪れる場所になりました。このガーデンは社員が自ら手入れや清掃をして美しく保っているんです。これは我々が指導しているからではなく、社員一人ひとりの自主的な思いから行っていること。自分たちのホームであるこの場所を美しく保つことで、多くの人が喜んでくれることを、身をもって感じているんです」

水分の移行を防ぎ、味や見た目を損なわないフィルムは、食品以外の業界からも注目されている。

今回注目された可食性フィルムも、会社の理念が生み出した成果だと塚越さんは続けた。

「最高顧問の塚越寛は、社員の幸せのために会社は永続しなければならない。そして会社の永続のためには研究開発に力を入れることが大切だという思いを持っていました。常に従業員の一割を研究開発にあて、会社設立から60年以上たった今も、まだ見ぬ寒天の新しい可能性を求めて約60人もの社員が研究を続けています。これまでの商品や新しい技術は、この思いがなければ生まれなかったと思います」