韓国が新型コロナウィルス対策を5月6日から生活の中での防疫(生活防疫)に転換した矢先に、さっそく13人のクラスターが発生した。最初の感染者の行動経路を辿ると、震源地はソウルの梨泰院(イテウォン)にあるゲイ・クラブ。さらに、感染者はゲイ同士で性行為を行う「ブラック睡眠部屋」と呼ばれる場所にも出入りしていたことが明らかになった。

5月25日の時点で梨泰院のナイトクラブ関連の感染者は200人以上に上っているが、こうした場では身元の発覚を防ぐため現金払いにされることが多い上、ゲイであることのアウティングを恐れて防疫当局の調査にも応じないケースが多く、全容の解明は困難を極めている。その背景には、性的少数者に対する韓国社会の厳しい目線がある。

韓国における性的少数者の事情について、前回記事「韓国で結婚を望まない『非婚』がムーブメント化しているワケ」に引き続き、クィア・フェミニズムを提唱する女性団体「オンニネットワーク」のリーダー格であるイスルさん、ナギさんに聞いた。

左から)ナギさん、イスルさん〔PHOTO〕筆者撮影

「人間的に欠陥がある」とみなされる

クィアフェミニズムとは、異性愛的観点にとどまらず、セクシャルマイノリティを含む女性の多様性に立脚したフェミニズムのこと。2004年、韓国政府の女性部(※女性「省」といった立ち位置)が「女性家族部」に再編されたのを機に同年11月、「家族の危機ではなく、家族のせいで危機なのだ」という声明のもとに結成された。ナギさん自身も、レズビアンであることを公表している。

「韓国において性的少数者は、差別を受けるのはもちろんですが、公表できる場自体がほとんどありません。昨年オンニネットワークが行った簡単な調査でも、差別を恐れて隠している人がたくさんいました。“男は男らしく、女は女らしく”。それができなければ人間的に欠陥があるとみなされる風潮がまだ強いのです」