鉄炮1挺60万円、軍事費トータル10億円!?戦国大名の懐事情とは

戦国時代「経済」の専門家が解き明かす
川戸 貴史
 

弓を射る際にはグローブとなる弓懸が必要だったが、弓懸3具が銭600文だったという記録がある(「賀茂別雷神社文書」)。これに従えば弓懸1つが200文、現代では1万円強の価値になる。

防具である具足も準備せねばならない。これも大将クラスと一兵卒とではおのずと品質も異なるだろう。廉価なクラスの具足については、価値を知る目安となる史料が毛利氏関係の史料にある。戦国期のどの時期かは不明だが、具足140両(領)の価格が銭650貫文だったという(『毛利家文書』627)。具足1領あたり約4貫600文程度ということになる。現在の価値にすると30万円程度か。

別の史料を基に算出した山口博氏は具足1領の価値を現在の価値にして115万2000円としているが、これは地域や時期、それに品質の違いが大きかったことを物語るのだろう。いずれにせよ、これくらいの価値のものが戦場に赴く人々にとって、命には替えられないぎりぎりの出費であった。

戦争に必要なものには馬もある。馬は移動や運搬の手段として広く活用されていたが、戦場では指揮官クラスには必須だった。彼らは自ら馬を保有して、しっかりと養っておく必要があった。馬は貴重であるため贈答の手段ともなっていた。先にみた毛利元就の官位取得においても馬は贈答対象となっていた。

毛利元就(『常山紀談 通俗挿画』国立国会図書館所蔵)

実際には代わりに銭を贈ったのだがその金額は3貫文だった。今の価値だと20万円程度である。現代人の感覚からすれば安いようにみえるが、中世の日本では盛んに馬が生産・養育されていたから、これくらいの価値と考えるのが妥当だろう。ただし、馬は購入後の養育コストが馬鹿にならない。庶民がそうやすやすと買えるものではなかった。

鉄炮1挺の値段は?

そして、戦国時代の戦場において最も印象深いのは、16世紀半ばから日本で急速に普及した鉄炮である

織田信長をはじめ、多くの大名にとって垂涎の新兵器だったが、当時の鉄炮の価格を示す史料は残念ながらほぼ皆無である。というのも、16世紀後半になって実戦に用いられるほど鉄炮が普及してくると、いくつかの大名は職人を配下に抱えて自ら製造させたり、大名ではなく家来たちが自前で用意したりするようになり、彼らがどれくらいの費用をかけて調達しているかがわからないからである。

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