ベストセラー科学書の著者が本気で考える「超能力は科学たりうるか」

そして「科学ライティング」とはなにか?
更科 功 プロフィール

現在の地球の気候変動については、非常に多くの科学的な研究がある。莫大なデータをもとに多くのモデルや仮説が立てられ、温暖化などの気候変動を説明しようとしている。それでも、わからないことは山ほどある。

たとえば、温暖化のおもな原因が、大気中の二酸化炭素の増加である可能性は非常に高い。しかし、それはそれとして、二酸化炭素の増加だけでは、現在の温暖化(たとえば気温上昇のパターン)を説明することができないことも事実である。

現在の気候変動は複雑で、わからないことがたくさんある。その割合は1パーセントどころではないだろう。もっとずっと多いはずだ。

それでも、気候変動についてまだ科学的に解明されていないことを、超常現象とは言わない。

気候変動を解明しようと試みる研究者たちは、超能力に挑んでいるわけではない Photo by Getty Images

いや、気候変動に限らない。どんな科学の分野にも、科学的に解明できない謎はたくさんある。だからこそ、研究が行われているわけだが、それらの謎も超常現象とは呼ばない。

つまり、「超常現象」は「科学的に説明できない謎」だけれど、「科学的に説明できない謎」ならすべて「超常現象」というわけではない。

そもそも大学や研究所で行われている研究は、すべて「科学的に説明できない謎」についての研究である。わからないから研究するのだ。今は説明できないことを、明日は説明できるように、研究を続けているのだ。

超能力と奇術

有名な超能力者(と言われることがある人)に、ユリ・ゲラー(1946~)がいる。

私がユリ・ゲラーをはじめて知ったのは、小学生のときに見たテレビ番組だった。私は、スプーンを曲げたり壊れた時計を直したりするユリ・ゲラーに興奮した。次の日、小学校に行くと、私の他にもユリ・ゲラーの番組を見ていた人はたくさんいて、教室でもかなりの話題になっていた。

スプーン曲げを披露するユリ・ゲラー(1979年撮影) Photo by Getty Images

さて、ここでは、ユリ・ゲラーに超能力があるかどうかは問わないことにしよう。ただ、確かなことは、ユリ・ゲラーと同じことができる奇術師は何人もいるということだ。

1970年代にユリ・ゲラーと対決していたカナダ出身の奇術師ジェームズ・ランディ(1928~)なら、ユリ・ゲラーの行った(自称)超能力を奇術で再現できるだろうし、ジェームズ・ランディの弟子であるバナチェック(1960~)は、超能力に見える現象はすべて奇術で作り出せると公言して憚らない。

翌日の新聞の見出しを予測してみせるメンタリストのバナチェック Photo by Getty Images

おそらくバナチェックなら、ユリ・ゲラーの(自称)超能力を、ユリ・ゲラーよりずっと上手に行うことができるだろう。

残念ながら私には、ランディやバナチェックのような鮮やかな奇術はできない。でも、超能力なら使えるかもしれない。