ベストセラー科学書の著者が本気で考える「超能力は科学たりうるか」

そして「科学ライティング」とはなにか?
更科 功 プロフィール

アメリカのデューク大学のジョゼフ・バンクス・ライン(1895~1980)の実験はとくに有名で、真似をしてみる人がたくさんいた。

ジョゼフ・バンクス・ライン(1958年撮影) Photo by Getty Images

私もその一人で、サイコロを振って好きな目を出そうとしたり、紙の裏に描いてある絵を当てようとしたりして、莫大な時間を無駄に、しかし楽しく過ごしたことがある。

ジョゼフ・バンクス・ラインの実験の1つ、ゼナー・カードを使ったもの。超能力を立証したとするその実験結果が科学界において再現されたことはない Photo by Getty Images

ところで、こういうことをしていると、決まって聞かれる質問がある。それは、

「あなたは超能力を信じてるの? それとも、信じてないの?」

という質問だ。私は、

「いや、信じているわけでも、信じていないわけでもないよ」

と答えるのだが、たいてい納得してもらえない。信じているか信じていないか、はっきりしろと言うことらしい。でも、本当にどちらでもないのだから、他に答えようがない。困ったことである。

たとえば、あなたの知り合いにAさんという人がいたとしよう。あなたはAさんと特別親しいわけではないし、Aさんが今どこにいるのかも知らない。そんなAさんの話題が、たまたま昼食のときに出た。あなたは友人から、こんなことを聞かれた。

「Aさんも今、昼食を食べてるのかな?」

「さあ、どうだろうね」

「そんな無責任なこと、言わないでよ。あなたは今Aさんが昼食を食べてるって信じてるの? それとも、信じてないの?」

「いや、信じているわけでも、信じていないわけでもないよ」

もちろん、これはあなたの本音だろう。あなたは、Aさんが今昼食を食べているか、あるいは食べていないか、まったく知らないのだ。だから、どちらかを信じることなんてできない。

超能力だって同じである。少なくとも私は、心の底から、どちらでもない。超能力を信じているわけでも、信じていないわけでもない。

それなのに、信じているのか信じていないのか、二者択一で決めるように迫られると、困ってしまうのである。

超能力を科学的に解明する?

超常現象を科学的に解明しようとしている人は、実は結構たくさんいる。そういう人の主張には、以下のようなものが割と多い。

「超常現象と報告されたものの約99パーセントは、科学的に説明できる現象である。しかし、1パーセントぐらいは、現在の科学では説明のできない現象が残る。世界にはまだ科学的に解明されていない謎があり、超常現象の研究は科学の可能性を広げることになるのである」

こういう主張を聞くと、超常現象でない現象は、科学で100パーセント説明できるように思えてしまう。でも、もちろんそんなことはない。